2015 Fiscal Year Annual Research Report
エピソード記憶の保持・想起に関する神経生理学的研究
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25460311
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
堀 悦郎 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (90313600)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 空間移動 / 空間記憶 / エピソード記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、2頭のサルの空間学習の行動データを記録するとともに、1頭のサルからはニューロン活動の記録を行った。 学習によるサルの行動変化パターンを解析した結果、当初は手掛かり刺激を直接示す空間内の手掛かり刺激に依存しているが、学習成立後は空間内のより遠方に設置された手掛かり刺激を用い、自己および報酬領域の位置関係を認知して学習していると考えられた。学習の成立した1頭のサルに対し、空間内の任意の手掛かり刺激を複数除去すると、最初の報酬領域を見出すまでの時間が延長していた。また、手掛かり刺激を1つにしてしまうと、課題を行うことができなくなった。このことから、サルは空間内遠方にある手掛かり刺激を2つ以上利用して自己および報酬領域の位置を認知していることが示された。 空間移動課題の学習が成立したサルについては、ニューロン活動の記録を行っている。海馬体からは、エピソード記憶に関連したニューロン応答が記録されている。すなわち、特定の報酬領域周囲で発火頻度が上昇する「場所およびイベント関連ニューロン」、特定の進行方向に依存した「方向あるいは視野関連ニューロン」などである。 一方、脳梁膨大後部皮質からは、特定の場所で発火頻度が上昇する「場所関連ニューロン」、サルが回転した際に発火頻度が上昇する「回転関連ニューロン」などが記録されている。これらのニューロンには、空間内の手掛かり刺激を除去あるいは追加すると、応答強度が減弱するものがあった。そこで、これらのニューロンに対して新規空間での移動課題をテストしたところ、場所関連のニューロン応答は消失していた。このことから、これらのニューロンは新奇性に対して応答しているのではなく、特定の場所に関する記憶の保持あるいは想起に関連していると考えられる。 現在、これらのサルの行動記録およびニューロン活動の記録・解析を継続しているとともに、発表のための準備を行っている。
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