2013 Fiscal Year Research-status Report
PPARα活性化による腎実質細胞保護を目的とした新たな慢性腎臓病治療法の開発
Project/Area Number |
25460329
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上條 祐司 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (50377636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青山 俊文 信州大学, 医学系研究科, 教授 (50231105)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | PPARα / ARB / イルベサルタン / 慢性腎臓病 / 尿細管 |
Research Abstract |
本研究は腎機能障害時にも安全に使用可能なペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α型(PPARα)アゴニストを確立し、PPARα活性化による腎実質細胞保護を目的とした新たな慢性腎臓病治療法を開発することを目的としている。本年度はアンジオテンシンIIレセプター拮抗薬(ARB)であるイルベサルタン、テルミサルタンが腎実質細胞のPPARαを活性化する効果があるか、マウスを用いた動物実験により検証した。その結果、イルベサルタンは、腎実質細胞でPPARαの転写活性を活性化させ、PPARαの標的遺伝子群の蛋白発現およびmRNA発現を亢進させるることが判明した。PPAR活性化作用が示唆されているテルミサルタンは腎実質細胞でのPPARα活性化作用を認めなかった。これらの差異は、各薬物の臓器移行性を反映した結果と考えられた。PPAR作用が無いとされているARBであるロサルタンでも腎実質細胞でのPPARα活性化作用を認めなかったことから、イルべサルタンのPPARα活性化作用はRASシステムを介したものというよりは、イルベサルタン固有の作用であることが示唆された。 現在、腎臓病モデルマウスにイルベサルタンを投与し、PPARα活性化作用を介した腎保護効果の有無について検討している段階である。 イルベサルタンは腎臓病保護におけるエビデンスをほかのARBよりも多く有しており、その理由の一つが、腎実質細胞のPPARα活性化作用であるかもしれない。 慢性腎臓病診療において、より効果的なARB製剤が選択できる可能性があり、その臨床的意義も大きいものと推察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イルベサルタンのみではあるが、腎実質細胞においてPPARα活性化作用を持つARB製剤を確認することができた。現在、腎臓病モデルマウスとしてprotein overload nephropathyをマウスに作成し、PPARα活性化作用を介した腎保護効果の有無について検討中であるが、病理学的解析ではイルベサルタン投与群で、他のARB(ロサルタン)投与群に比較し、尿細管障害が軽減することを確認している。分子生化学的解析は中途であるが、おおむね腎実質細胞でのPPARα活性化を示唆する所見が得られており、腎障害軽減効果の主因ではないかと推察可能である。今後、傍証を増やして腎保護効果の詳細を確定する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、腎臓病モデルマウスとしてprotein overload nephropathyをマウスに作成し、PPARα活性化作用を介した腎保護効果の有無についてイルベサルタンを中心に検討中である。病理学的解析ではイルベサルタン投与群で、他のARB(ロサルタン)投与群に比較し、尿細管障害が軽減することを確認しているため、その保護効果メカニズムについて解析を進めている。具体的には、PPARα活性化を介した腎実質細胞の脂肪酸代謝能力変化、酸化ストレス変化、炎症反応変化について、それぞれの関連分子のmRNA解析、蛋白発現解析を行っている。これらの一連の動物実験結果により、イルベサルタンのPPARα活性化を介した腎保護効果が明らかとなった場合には、ヒト腎生検組織を用いて、イルベサルタンのPPARα活性化作用の確証を得る予定である。
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