2013 Fiscal Year Research-status Report
脳アストロサイトにおけるカリウム緩衝機構と薬理作用のin silico研究
Project/Area Number |
25460331
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 慎吾 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40437314)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | アストロサイト / カリウム緩衝 / 水チャネル / 内向き整流性カリウムチャネル |
Research Abstract |
本研究の目的は、脳を保護するためにアストロサイトが果たす重要な役割の一つである、細胞外カリウム濃度の過度の上昇を防ぐ「カリウム緩衝機構」の機序の解明と、脳卒中での細胞外カリウム濃度上昇を防止するために脳梗塞急性期に用いる新規治療薬の機序の探索である。本研究の内容は、カリウム緩衝に関係しているイオンチャネルやトランスポーターのモデルの構築、および統合により、イオン輸送、イオン濃度、細胞体積の変化に対応するアストロサイトモデルをコンピュータ上で開発して、様々な検討を行うことである。初年度である平成25年度は、アストロサイトモデルの各構成要素の構築と、構成要素の統合によるアストロサイトモデルの構築を実行した。 1 アストロサイトモデルの各構成要素の構築 アストロサイトに存在してカリウム緩衝機構に関係すると現在考えられているイオンチャネルやトランスポーターなどのモデル化を行った。予備研究において構築されていたイオンチャネルやトランスポーターなどに加え、pHに関連した要素のモデルを一から構築し、アストロサイトのリモデリングにより発現する塩素電流などを追加モデル化した。 2 各構成要素の統合によるアストロサイトモデルの構築 前項で構築したモデルを統合し、改良したアストロサイトモデルを構築した。この構成要素の追加により、虚血時に重要な役割を果たしているpHの挙動やリモデリングのカリウム緩衝機構への影響を計算できるようになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたアストロサイトモデルの各構成要素の構築と各構成要素の統合によるアストロサイトモデルの構築については、ほぼ予定通りに実行することができた。モデル構築という理論的な研究であるため、計画以上に成果が出にくい性質があるが、構築したモデルによる解析で興味深い結果が出てくることが今後期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は予定通りに、モデル構築から、アストロサイトモデルによるカリウム緩衝機構の検討とアストロサイトモデルによる薬理効果の検討に重点を移していく予定である。 1 アストロサイトモデルによるカリウム緩衝機構の検討 平成25年度に構築されたアストロサイトモデルを用いることで、カリウム緩衝機構の機序を明らかにする。このモデルを用いる検討の利点に、実験ではできない様々な条件での詳細な検討が簡単にできるという点がある。さらに、アストロサイトモデルに実際の細胞形状を導入することで、過剰なカリウムの吸収および血管への輸送の検討を行う予定である。 2 アストロサイトモデルによる薬理効果の検討 脳卒中への新たな薬理的治療方法の可能性を探索するために、前年度に構築されたモデルを用いて、カリウム緩衝機能を増強する薬理作用及び細胞膨張を防ぐ薬理作用の検討を行う。この検討においては、どのような薬理作用が最終的に神経細胞の細胞死を防ぐ脳保護薬としての潜在能力を持っているかを、コンピュータ上でバーチャルに検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では、平成25年度においてアストロサイトモデルの各構成要素の構築と各構成要素の統合によるアストロサイトモデルの構築を行う予定であった。その際に、平成25年度においては複雑な形状などのモデル化は行わない予定であったこともあり、実行前の予想よりも計算量が必要とされないモデルを作ることができた。また、作業の大部分がプログラミングである段階なので、より複雑で計算量を必要とされるシミュレーション解析を行うことになる来年度以降に最新の計算機を購入したほうが好ましいと判断したため、次年度使用額が生じた。 平成26年度においては、平成25年度において購入することができなかったワークステーション等の計算機の購入を行う予定である。また、計算機関連消耗品及び学内計算機(PCクラスター等)維持・使用にかかる費用にも使う。さらに、コンピュータソフト及びライセンス代にも使用する予定である。また、補助的に、計算結果で得られた結論の確認のために実験で使用する試薬などの購入を予定している。そして、成果の発表のための学会参加のために費用にも使う予定である。平成27年度においては、最終年度なので、計算機の購入は予定をしていないが、その他の使用計画については、平成26年度をほぼ同じである。
|
Research Products
(6 results)