2013 Fiscal Year Research-status Report
メチル化DNA結合タンパク質CIBZが心筋分化を制御するメカニズムの解析
Project/Area Number |
25460368
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
松田 永照 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (00335481)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 胚性幹(ES)細胞 / 心筋の発生分化 / BTB型のジンクフィンガータンパク質 / 転写因子 / ノックアウトマウス / DNAメチル化 / 胚様体 |
Research Abstract |
1. マウスES細胞からLIF (leukemia inhibitory factor)の非存在下で浮遊培養すると、三胚葉由来の細胞を含む胚様体(EB)が形成される。培養5日目のEBをさらに接着培養すると、心筋の拍動が観察される。興味深いことに、野生型ES細胞由来のEBより、CIBZ遺伝子を欠損したES(CIBZ -/- ES)細胞由来のEBは、心筋細胞への分化促進(心筋の拍動を開始する時期の早期化と拍動範囲の拡大)が確認された。 2. ES細胞からEB形成の過程において、CIBZタンパク質の発現が早期に低下していることが分かった。野生型ES細胞由来のEBより、CIBZ-/- ES細胞由来のEBでは、中胚葉と心血管系の形成と分化をそれぞれ制御する転写因子であるBrachyury (T)とMesp1のmRNAの発現が上昇していることを判明した。 3. CIBZがTとMesp1の発現を直接的に制御するどうか確かめるため、ES細胞を用いて抗CIBZ抗体でクロマチン免疫沈降法を行った。その結果、CIBZがTとMesp1のプロモーター領域に結合することを確認した。しかし、ES細胞に脱メチル化剤を投与してもCIBZによるTとMesp1のプロモーター領域への結合は減少しないため、CIBZによるこの2つの転写因子の制御にDNAメチル化が関与しないことが強く示唆された。 4. CIBZ-/- ES細胞は増殖が顕著に低下していることから、CIBZ欠損マウスは胎生致死になることが予想される。その可能性を回避するため、Cre-loxPシステムを用いた条件付き破壊ベクターをES細胞に導入し、キメラマウスを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CIBZの欠損によるES細胞の心筋への発生と分化への促進メカニズムについて、CIBZがDNAメチル化非依存的にTとMesp1への制御を介して行う可能性が考えられる。今後、CIBZがTとMesp1への制御機構を明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
1. CIBZによる標的遺伝子の転写調節を検証する。クロマチン免疫沈降法で同定した標的遺伝子(TとMesp1)の転写調節領域をpGL3 ベクターに入れレポーターを作製し、過剰発現したCIBZとその欠失変異体による影響を様々なマウス細胞を用いてレポーターアッセイで調べる。 2. CIBZのES細胞の過剰発現株を作製し、CIBZが心筋細胞の分化を抑制するかどうかを検証する。ES細胞に遺伝子が安定的に発現する評価が高いpEF1/hrGFPベクターにCIBZ のcDNA を導入し、CIBZを過剰発現するES細胞株を複数作製する。それらのES細胞株を心筋細胞分化へ誘導させた場合、心筋分化を抑制するかどうかを検証する。 3. CIBZの片側アレル欠損マウスを作製する。作製したCIBZflox-neo/+キメラマウスを野生型のC57BL/6Jと交配させ、germline transmission の確認を行った上で、戻し交配を10回繰り返す。B6.Cg-Tg(CAG-Cre)というCreマウスとの交配により、CIBZflox-neo/+マウスのNeo配列とCIBZタンパク質をコードする領域の除去を行い、CIBZの片側アレル欠損マウスを作製する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1、CIBZを欠損したES細胞はどの心筋細胞集団への分化が優位なのかを検証する実験計画。予定した各心臓形成ステージに重要な遺伝子のタンパク質の発現を調べる(ウェスタンブロッティング、免疫蛍光染色とフローサイトメトリー)ためにまだ発注していない抗体が残っている。 2、CIBZ条件的に破壊するマウスの作製について、作製費用の一部が次年度に請求されることにがある。 ES細胞の分化段階に重要な遺伝子に対する抗体を発注する。
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