2014 Fiscal Year Research-status Report
殺菌に重要な活性酸素生成型NADPHオキシダーゼを構成する膜蛋白質の活性化機構
Project/Area Number |
25460372
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮野 佳 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60444783)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 殺菌 / Nox / 活性酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
好中球等の食細胞は、生体内に侵入した病原体を捉え(貪食)、それを殺菌する。その際に、食細胞NADPHオキシダーゼは活性化され、スーパーオキシドを生成する。スーパーオキシドは、速やかに過酸化水素や次亜塩素酸に変換され、これらの活性酸素種が強力な殺菌剤として機能する。食細胞NADPHオキシダーゼの酵素本体は、膜タンパク質のNox2(NADPH oxidase 2)である。Nox2の重要性は、その遺伝的欠損が幼少期より重篤な感染症を繰り返す慢性肉芽腫症を引き起こすことからも示される。Nox2は、同じく膜タンパク質であるp22phoxと複合体を形成している。p22phoxが遺伝的に欠損した食細胞では、Nox2タンパク質を検出できないことから(上述の慢性肉芽腫症を引き起こす)、p22phoxはNox2をタンパク質レベルで安定化させる役割を持っている。Nox2-p22phox複合体は、それだけでは活性を示さない。その活性化には、細胞質に存在する特異的な活性化タンパク質であるp47phoxとp67phox、そして低分子量Gタンパク質Racが必要である。これらのタンパク質は、細胞刺激に応じて膜移行し、Nox2-p22phoxと複合体を形成することにより、Nox2のスーパーオキシド生成活性を誘導する。本年度は、Nox2の活性化に必要なタンパク質間の相互作用に注目して研究を行なった。また、新規の過酸化水素検出プローブによる食胞内の過酸化水素の検出を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、まずNox2の活性化に必要なタンパク質間相互作用機構に焦点を絞り研究を遂行した。Nox2は、「活性化タンパク質p47phoxの構造変化」と「低分子量Gタンパク質RacのGDP/GTP交換」の2つのスイッチが同時にオンになることより活性化される。活性型p47phoxはp22phoxと相互作用し、GTP結合活性型Racはp67phoxと結合することにより、Nox2-p22phoxが存在する膜上で活性型オキシダーゼ複合体を形成する。以前より、アラキドン酸(AA)が、in vivoとin vitroの両方で、Nox2を効果的に活性化することが知られていたが、そのメカニズムについてはp47phoxの構造変化を誘導すること以外は十分にはわかっていなかった。本研究では、AAがもうひとつのスイッチであるRacを細胞レベルでGDP結合型からGTP結合型へ変換することを示した。さらにNox2の活性化に必要な第三のスイッチ「p67phox-Rac複合体とNox2のC末側細胞質領域との直接相互作用」の存在を見出した。このスイッチは、AAの存在に依存してオンになる。こうしてAAは、既知の2つのスイッチに加えて第三のスイッチの全てをオンにすることによりNox2を活性化する。 Nox2は、食細胞において食胞内に活性酸素を生成することが知られている。しかしながら、検出試薬は拡散してしまうため、食胞内の活性酸素を高感度に検出するのは困難であった。私は、新規の過酸化水素検出プローブを食胞内に集積させることにより(SNAPタグを使用して)、食胞内の過酸化水素を検出することに成功した。これらの研究成果は、海外の学術誌(Journal of Biological ChemistryやAnalytical chemistry)で報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、Nox2の活性化に必要な既知の二つのスイッチ、すなわち「活性化タンパク質p47phoxの構造変化」と「低分子量Gタンパク質RacのGDP/GTP交換」に加え、第三のスイッチ「p67phox-Rac複合体とNox2のC末側細胞質領域との直接相互作用」が存在することを見出した。また、このスイッチはNox2の活性化剤であるアラキドン酸によりオンにされることを示した。本研究課題の最終目標は、食細胞NADPHオキシダーゼであるNox2の活性化状態に関する新しい知見を得ることである。具体的には、Nox2の成熟化に必要なパートナー分子p22phoxとの結合様式や、可溶性活性化タンパク質との活性化複合体の詳細の情報を得ることである。本年度の成果は(特にAAが第三のスイッチをオンにするメカニズム)、本研究課題を遂行する上で非常に有力な情報となり得る。最終年度も研究実施計画に従って研究を遂行する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] DOCK2 and DOCK5 Act Additively in Neutrophils To Regulate Chemotaxis, Superoxide Production, and Extracellular Trap Formation.2014
Author(s)
Mayuki Watanabe, Masao Terasawa, Kei Miyano, Toyoshi Yanagihara, Takehito Uruno, Fumiyuki Sanematsu, Akihiko Nishikimi, Jean-Francois Cote, Hideki Sumimoto, Yoshinori Fukui
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Journal Title
The Journal of Immunology
Volume: 193
Pages: 5660-5667
DOI
Peer Reviewed
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