2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜コレステロールによる Eat me シグナル抑制機構の解明
Project/Area Number |
25460375
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
高桑 雄一 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (40113740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萬野 純恵 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (10101205)
斎藤 将樹 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (50400271)
越野 一朗 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (80328377)
田中 正太郎 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (90380667)
新敷 信人 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (80569658)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リン脂質 / 非対称性分布 / コレステロール / PLSCR1 |
Research Abstract |
細胞膜はリン脂質やコレステロールを成分とする脂質二重層である。リン脂質の非対称性が破綻しホスファチジルセリン (PS) が外層へ表在化すると、「Eat meシグナル」の惹起に繋がる。申請者らは、フリッパーゼが阻害されかつコレステロールを除去された赤血球膜では、生理的Ca2+濃度においてPSの表在化が顕著に引き起こされる結果を得ていた。 申請者らは、そのスクランブリング活性にはphospholipid scramblase 1 (PLSCR1) が関与することを考えている。そこで本年度は、PLSCR1のスクランブリング活性をリポソーム再構成系を用いて解析した。まず、大腸菌を用いてリコンビナント全長PLSCR1を作製したところ、PLSCR1を介したスクランブリング活性が見られ、またその活性はコレステロール存在下に抑制された。リン脂質はPLSCR1の膜貫通ドメインに沿って脂質二重層の内外層間を輸送されることが想定される。そこで、PLSCR1の膜貫通ドメインを含んだ部分ペプチドを作製したところ、部分ペプチドを介したスクランブリング活性はコレステロールによって阻害された。これらの結果から、PLSCR1はスクランブリング活性を持つタンパク質であり、かつその活性はコレステロールによって阻害されることが示された。 2003年にSimsらはPLSCR1ノックアウトマウスを作製したが、その赤血球のスクランブリング活性は正常であると報告した (Blood, 2003)。申請者らは、ヒトおよびマウスの赤血球膜に含まれるPLSCR1量を比較した結果、ヒト赤血球膜にはPLSCR1が豊富に存在するのに対し、マウス赤血球膜にはほとんど存在しないことが分かった。すなわち、マウス赤血球にはPLSCR1の存在量が乏しいため、ノックアウトマウスのスクランブリング活性が正常だったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、PLSCR1にはスクランブリング活性があること、そしてその活性がコレステロールによって抑制されることをリポソーム再構成系を用いて示すことが出来た。また、ヒトとマウスの赤血球膜に含まれるPLSCR1量の比較実験は、申請書作成段階では予定していなかった実験であるが、成果を挙げることが出来た。 一方で、PLSCR1が多量体を形成しているかどうかについては、まだ解析中であり明確な結論を得ていない。 以上のことから、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではこれまで、PLSCR1を介したスクランブリング活性はコレステロールによって抑制されることを示した。そこで今後は、(1) PLSCR1の多量体形成におけるコレステロールの役割について検討し、また (2) PLSCR1の膜貫通ドメインには、リン脂質の極性頭部が通過するための親水性領域が存在することを示す。NBD標識リン脂質を用いたスクランブラーゼ活性実験、Blue-native PAGEや比重遠心分離法などの生化学的手法や、蛍光相互相関分光法などの細胞生物学的手法を用いる。 これらの解析を通じ、PLSCR1の構造とスクランブリング活性の関係性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度使用額が不足したため。 平成26年度使用額と合算し、物品費として使用。
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