2013 Fiscal Year Research-status Report
環境ストレスによるmRNA監視機構の変動と病態への影響に関する研究
Project/Area Number |
25460402
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | National Institute for Minamata Disease |
Principal Investigator |
臼杵 扶佐子 国立水俣病総合研究センター, 臨床部, 部長 (50185013)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤村 成剛 国立水俣病総合研究センター, 基礎研究部, 室長 (20416564)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 環境ストレス / mRNA監視機構(NMD) / 早期終止コドン / Snhg1 / GAS5 / 蛋白質翻訳 / ストレス蛋白質 |
Research Abstract |
環境ストレス(酸化ストレス、小胞体ストレス)下におけるmRNA監視機構(NMD)の変動について、早期終止コドンpremature translation termination codon (PTC)をもつために通常はNMDにより分解されている蛋白質をコードしない RNAであるsmall nucleolar RNA host gene 1 (Snhg1) あるいは growth arrest specific 5 (GAS5) のmRNA発現を指標に検討した。環境ストレス感受性、非感受性筋芽細胞、ラット培養大脳皮質神経細胞、グリア細胞いずれの細胞でも、酸化ストレス、小胞体ストレス負荷により、Snhg1あるいは GAS5 のmRNAの発現増加が認められたことから、環境ストレス(酸化ストレス、小胞体ストレス)によってNMDは抑制されると考えられる。 そこで、環境ストレスによるNMD抑制がPTCを有する遺伝性疾患の病態に及ぼす影響について、PTCを有する疾患モデル細胞であるUllrich線維芽細胞を用いて検討した。Ullrich線維芽細胞に弱い小胞体ストレスを与えたところ、 Snhg1 mRNAの発現は増加し、原因遺伝子のmRNA発現の増加と欠損蛋白質の発現が認められた。環境ストレスは、PTCを有する疾患細胞にNMD抑制をもたらし、その表現型に影響を及ぼす因子となりうることが推測された。 環境ストレスによってNMDは抑制されることが明らかになったが、NMDの実行は、蛋白質の翻訳と密接に関係している。一方、細胞ストレス下では非ストレス蛋白質の翻訳は低下する。環境ストレス負荷時はNMD構成因子の一部は発現が低下した。環境ストレス負荷時のNMD抑制における欠損蛋白質の発現メカニズムについてさらに検討を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標である(1)環境ストレスがNMDに及ぼす影響についての検討、(2)環境ストレスによるNMD変動がPTCを有する遺伝性疾患の病態に及ぼす影響に関する検討、(3) 環境ストレスによるNMD変動メカニズムの検討、を実施し、各サブテーマにおいて知見が得られた。 環境ストレスがNMDに及ぼす影響についての検討では、通常はNMDにより分解されている蛋白質をコードしない RNAであるSnhg1 あるいは GAS5 mRNA発現を指標に、環境ストレス下におけるNMD抑制を明らかにした。環境ストレスによるNMD変動がPTCを有する遺伝性疾患の病態に及ぼす影響に関する検討では、PTCを有する疾患モデル細胞であるUllrich線維芽細胞を対象に、環境ストレスによるNMD抑制とその疾患表現型に及ぼす影響が明らかになった。環境ストレスによるNMD変動メカニズムの検討においては、環境ストレス下におけるNMD構成因子の動態について知見を得た。環境ストレス下では非ストレス蛋白質の翻訳は低下するが、NMDの実行は、蛋白質の翻訳と密接に関係している。環境ストレス下における蛋白質の翻訳において中心的役割を担うeukaryotic initiation factor 2 alpha (eIF2α)のリン酸化の意義についてさらに検討を進めており、本年度における当該目標はほぼ達成できたと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
環境ストレスによるNMD変動メカニズムについて検討するために、環境ストレス下における蛋白質の翻訳において中心的役割を担うeukaryotic initiation factor 2 alpha (eIF2α) のリン酸化の関与について、リン酸化無効のeIF2α変異体を用いて明らかにする。また、環境ストレス下でのNMD変動が環境ストレス応答に及ぼす影響について、ストレス応答におけるkey factorと考えられている転写因子ATF4の発現動態を指標に、環境ストレス下でのNMD変動が環境ストレス応答に及ぼす影響について明らかにする。 さらに、環境ストレスによるNMD変動が、細胞増殖能、細胞周期などの細胞生理機能に影響を及ぼすか、腫瘍細胞、非腫瘍細胞を用いて、NMD構成因子のノックダウン細胞におけるNMD抑制下での細胞応答の違いと比較検討するとともに、preconditioning stressによる病態変化、臨床応用に関する検討を行う。即ち、環境ストレスによるNMD変動がもたらす腫瘍細胞、非腫瘍細胞の生体応答差を、酸化ストレスや小胞体ストレスなどの弱いストレスを前投与(preconditioning stress)することで、治療に応用可能か検討する。さらに、PTCを有する遺伝性疾患のモデル細胞について、siRNAを用いたNMD抑制治療とpre-conditioning stress負荷の併用効果に関する検討を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外発注の試薬に差額が生じ、また一部物品の納入が遅れ、支払請求額の把握が遅れたため。 次年度は、今年度に生じた差額を合わせ、研究遂行に必要な物品費として使用する。
|