2014 Fiscal Year Research-status Report
環境ストレスによるmRNA監視機構の変動と病態への影響に関する研究
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25460402
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Research Institution | National Institute for Minamata Disease |
Principal Investigator |
臼杵 扶佐子 国立水俣病総合研究センター, 臨床部, 部長 (50185013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤村 成剛 国立水俣病総合研究センター, 基礎研究部, 室長 (20416564)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 環境ストレス / mRNA監視機構(NMD) / eIF2α リン酸化 / 蛋白質翻訳 / 早期終止コドン (PTC) / Snhg1 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境ストレス下ではmRNA監視機構NMDは抑制され、早期終止コドンPTCを有する疾患細胞の欠損蛋白質が発現したことから、環境ストレスは、PTCを有する疾患細胞の表現型に影響を及ぼす因子となりうることが推測された。 細胞ストレス下では非ストレス蛋白質の翻訳は低下し、ストレス防御に機能するストレス蛋白質の翻訳は亢進する。その中心的役割を担うのがeukaryotic initiation factor 2 alpha (eIF2α) のリン酸化である。環境ストレス下でのNMD抑制におけるeIF2αリン酸化の意義について検討するために、リン酸化無効のeIF2α変異体を作成した。細胞ストレス下では、非ストレス下では合成されない転写因子ATF4 が下流のストレス蛋白質の転写を活性化することから、ATF4はストレス応答におけるkey factorと考えられている。ATF4の発現動態にはNMDの関与が指摘されているが、siRNAを用いたNMD抑制細胞の環境ストレス下における検討ではATF4 mRNAは増加したがATF4蛋白質の発現増加は認められず、ATF4の発現は主にeIF2αのリン酸化に依存すると考えられた。さらにATF4 knockdown 細胞では、ストレス下における小胞体シャペロンGRP78の発現がnon-silencing siRNA導入細胞よりも少なく、その発現は、peIF2α/ATF4 pathway が関与すると考えられた。eIF2α変異体プラスミド導入細胞では、環境ストレス下で野生型に比しeIF2αのリン酸化が無効であることを確認した。NMD構成因子であるUpf1の発現は抑制された。環境ストレス下におけるNMD抑制とeIF2αのリン酸化の意義についてさらに詳細に検討するために、プロミシン選択性eIF2α変異体を作成し、検討を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境ストレス下ではNMDが抑制されPTCを有する疾患細胞の欠損蛋白質が発現するが、その発現メカニズムについて検討を進めた。環境ストレス下ではeukaryotic initiation factor 2 alpha (eIF2α) のリン酸化により、非ストレス蛋白質の翻訳は低下し、ストレス応答のkey factorと考えられる転写因子ATF4が発現してストレス防御に機能するストレス蛋白質が合成される。siRNAを用いたNMD構成因子のノックダウン研究から、NMD抑制下におけるATF4の発現動態を明らかにした。NMDの実行は蛋白質の翻訳と密接に関係する。環境ストレス下でのNMD抑制がeIF2αのリン酸化による蛋白質の翻訳抑制と関係するか検討するために、eIF2αのリン酸化が無効なeIF2α変異体プラスミドを作成し、細胞に導入して環境ストレス下で野生型に比しeIF2αのリン酸化が無効であることを確認した。環境ストレス下では、通常はNMDにより分解されている蛋白質をコードしない RNAであるSnhg1 mRNA発現が増加することをすでに明らかにしているが、Snhg1 mRNA発現を指標に、環境ストレス下におけるNMD抑制とeIF2αのリン酸化による蛋白質の翻訳抑制との関係についてさらに詳細に検討するために、選択培養のためのプラスミドを作成した。現在、安定変異細胞株を得るために選択培養を実施しており、本細胞株を用いて環境ストレス下でのストレス応答についてさらに検討して、環境ストレス下でのNMD抑制メカニズムを明らかにし、環境ストレス下でのNMD抑制におけるPTCを有する疾患細胞の欠損蛋白質の発現メカニズムの解明につなげる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に作成したプロミシン選択性eIF2α変異体、野生体プラスミドを用いて、安定変異細胞株を作成し、環境ストレス下でのNMD抑制とeIF2αのリン酸化による蛋白質の翻訳抑制との関係についてさらに詳細に検討を続け、環境ストレスによるNMD抑制メカニズムを明らかにする。環境ストレス下でのNMD変動はPTCを有する疾患細胞の欠損蛋白質の発現とその表現型に影響を及ぼす因子となりうることが考えられることから、環境ストレス下でのNMD変動が細胞ストレス応答に及ぼす影響について検討し、ストレス応答のkey factorである転写因子の動態を明らかにして、環境ストレスによるNMD変動がもたらす生体応答差を、酸化ストレスや小胞体ストレスなどの弱いストレスを前投与(preconditioning stress)することで、PTCを有しNMD抑制が欠損蛋白質の発現に有用な疾患細胞の治療に応用可能か検討する。また、その場合の有用なNMD抑制効果が得られる方法についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
論文投稿費の確保をおこなっていたため、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費と合わせて消耗品費として使用予定。
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Research Products
(5 results)