2013 Fiscal Year Research-status Report
性腺の分化・形成異常と悪性腫瘍の多段階的発症機構の分子病理学的解明
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25460427
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
福澤 龍二 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 研究員 (40245543)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 性分化異常 / Leydig cell |
Research Abstract |
研究の目的は、近年社会的な認知・理解が必要とされる性分化異常症の分子病理学的な診断法を確立することである。 本研究にあたり、性分化異常と診断された精巣の病理組織標本の電子画像化(バーチャルスライドの作成)を行った。この作業により、特徴的な組織所見を持つ精巣組織を見いだした。その特徴的な所見は(1)思春期前の精巣にもかかわらず、Leydig細胞が出現しており、その細胞質は泡沫状を呈していた。(2)精巣(精細管)の低形成が見られた。脂肪染色および電子顕微鏡的な検索により、Leydig細胞の細胞質は脂肪滴の沈着により泡沫状を呈することが確認された。また、精細管およびその構成細胞が、サイズ、数的にも減少し低形成であることをモルフォメトリーにより客観的に示した。この所見を持つ症例6例のうち、1例にSF1遺伝子の異常が見られたため、他の5例についても同遺伝子の異常の検索を行った。その結果、全例にSF1遺伝子の変異(6例中5例が未報告の新しい変異)を同定した。さらに、272例の精巣組織を検索し、この特徴的な精巣の組織像がSF1遺伝子の診断に有用であることを確認した。SF1遺伝子異常は、近年報告された性分化異常症のひとつであるが、臨床症状は幅広く、また、内分泌学的にも診断法もなく、いままで診断が困難であった。しかし、今回、精巣の所見が同疾患の診断に有用であることを初めて明らかにすることができ、大変意義深いものとなった。この研究成果は、Hormone Research in Paediatrics誌に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的である性分化異常症に関する分子病理学的な診断法のひとつとして、SF1遺伝子異常の診断法を確立し、論文発表することができた。順調なスタートと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
予算の関係で、マイクロアレイの費用が足りず、性腺形成異常から癌化に至る課程でおこる分子異常を用意した症例すべてに行うことが困難と予想される。そこで、次年度以降は計画を修正し、以下の2つの課題に焦点を当て、研究の完成と論文発表を目指したい。(1)混合性性腺形成異常と真性半陰陽の鑑別と腫瘍発症の分子基盤(2)Leydig細胞の発生、消失,分化に関する研究。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今までの研究成果よりさらに英文論文最低でも3報の投稿を予定している。これらの論文は、カラー画像写真が多く、通常より掲載費用がかかる可能性があり、使用する金額の繰り越しをした。 In situ hybridization ならびにFISHのプローブなどの消耗品に使用する金額が150万円。残り50万円を研究研修費(新しい実験を技術を学ぶための費用)および論文掲載費用として使用する予定である。
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