2014 Fiscal Year Research-status Report
EGFRを標的とした難治性癌の免疫分子標的治療への融合に向けた基盤研究
Project/Area Number |
25460430
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
小林 博也 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90280867)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
HER-2、HER-3、c-Metなどと、非常に相同性の高い配列を含むEGFR875-889エピトープペプチドは、複数のHLA-DRアリル拘束性にヘルパーT細胞を誘導し、EGFRを高発現する肺癌、頭頸部扁平上皮癌細胞を認識し、TH1型リンフォカイン産生を誘導することを明らかにした。更にEGFR阻害薬が腫瘍細胞表面上のMHC分子の発現を上昇させ、T細胞応答を増強することを見いだし、EGFR阻害薬(エルロチニブ)が免疫療法のアジュバントとしても機能することを提唱した。EGFR阻害薬が腫瘍抗原特異的ヘルパーT細胞の抗腫瘍効果を増強するアジュバントとして、普遍的に機能するか検討を進めたところ、ある種の細胞株(歯肉扁平上皮癌細胞株Sa3)においては、EGFR阻害薬が腫瘍のMHC分子の発現を上昇させるにも関わらず、ヘルパーT細胞の免疫応答をむしろ低下させることが判明した。EGFR阻害薬は、腫瘍細胞内のトータルのEGFRタンパク量を減少させることはなく、また腫瘍細胞表面上の共刺激分子(CD80,CD86)や免疫チェックポイントシグナル分子(PD-L1)の発現に影響を及ぼさなかったため、T細胞への抗原提示の低下が免疫応答源弱の要因ではないと考えられた。そのメカニズムの一因として腫瘍からのサイトカイン分泌に着目したところ、腫瘍からのTGF-βやプロスタグランジンE2の発現がEGFR阻害薬によって増強し、さらにこの増強したサイトカイン分泌によってT細胞の免疫応答が減弱するものと考えられた。このEGFR阻害薬による抗腫瘍免疫への負の制御はCOX-2阻害薬やTGF-β阻害薬およびこれに対する抗体の添加により解除可能な事より、EGFR阻害薬と、これらの抑制性サイトカイン分泌阻害薬や抗体の併用が癌免疫治療のアジュバントとして有効であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EGFR阻害薬がMHC分子の発現を増強させることで、抗原特異的T細胞の免疫応答を増幅させる一方で、癌種によっては、抑制性サイトカインの発現を誘導し、免疫応答を負に制御するという、生体にとっては好ましくない状況を引き起こすことが明らかとなった。このEGFR阻害薬による抗腫瘍免疫への負の制御はCOX-2阻害薬やTGF-β阻害薬および抗体の添加により解除可能な事より、EGFR阻害薬と、これらの抑制性サイトカイン分泌阻害薬やこれらに対する抗体の併用が癌免疫治療のアジュバントとなる可能性を示唆するものである。これらの知見は、EGFRを標的とした免疫治療、分子標的治療の融合とその相乗効果を目指した研究基盤を確立するという本研究目的に十分適うものである。
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Strategy for Future Research Activity |
EGFR875-889ペプチドと高い相同性を有するc-MetならびにHER3由来エピトープペプチドから抗原特異的T細胞を誘導し、HERファミリー分子特異的T細胞の反応を多角的に検討したい。
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