2013 Fiscal Year Research-status Report
肺扁平上皮癌の悪性度に与える分子機構の病理学的・分子生物学的研究
Project/Area Number |
25460438
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古賀 孝臣 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (70380615)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 肺扁平上皮癌 / CHFR / エピジェネティックドライバー / 異常メチル化 / 分子標的 |
Research Abstract |
DNAマイクロアレイを用いた解析で、CHFRと連動して発現変動する遺伝子約4500個のうち、統計学的に発現値の分散が低いこと、発現変動比が2程度以上あることを条件に、解析対象を50の遺伝子に絞り込んだ。平成25年度の進捗状況は以下の通りである。 1)免疫組織化学的蛋白発現;対象50遺伝子のうち、以下の6遺伝子について解析を行った。CHFRの遺伝子導入により発現が抑制される遺伝子(GAS6, AXL, CEACAM6, MUC4):GAS6、AXL, CEACAM6, MUC4はそれぞれ8/20例, 23/39例, 18/43例, 52/75例において発現を認めた。CHFRの遺伝子導入により発現が増加する遺伝子(Fbxw7, RILPL):Fbxw7, RILPLはそれぞれ34/41例, 25/46例に発現が認められた。 CHFRの遺伝子導入により発現が抑制される遺伝子、および発現が増加する遺伝子は、CHFRの異常メチル化の見られる扁平上皮癌において、それぞれ発現の亢進、発現の減弱が予想されたが、全105例の解析が終了していない段階ではあるが、統計学的に関連は認められなかった。 2)臨床病理学的因子との関連:腫瘍径、腫瘍分化度、病理病期、脈管浸潤、喫煙など諸因子と上記遺伝子の発現を比較したが、いずれも有意差は認められなかった。 現段階で特質すべき点は、CHFRの異常メチル化の無有とは関連がなかったものの、CEACAM6とMUC4の発現に正の相関(p<0.05)が見られ、相互に発現制御する関係が考えられた。いずれの遺伝子も肺扁平上皮癌における発現の意義は明らかにされていないが、他臓器の扁平上皮癌においては悪性度と関連するとする報告があり、解明すべき課題である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)解析対象の50遺伝子の一次抗体が入手できた分については解析を進めているが、半数以上の遺伝子について現状ではコマーシャルベースで購入できておらず、何らかの工夫が必要である。 2)全105例の肺扁平上皮癌症例のパラフィン標本について、それぞれ多数の未染標本を準備する必要があり、やや時間を要した。 3)平成25年度より所属が変更になり、若干の調整されるべき問題があったが、平成26年度以降はこれらの点について改善される見込みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策:(1)上記1)の問題については、先に凍結標本を用いてmRNAの発現を調べ、対象の50遺伝子のすべてについて解析を施行する方針である。 (2)研究実績の概要に記したように、CEACAM6とMUC4の関連等の予期されなかった結果についても並行して分子生物学解析を施行する。 (3)MUC4のリガンドであるHER2、Fbxw7の分解基質であるc-mycなどの発現も合わせて解析し、関連を検討する。 研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での課題等:統計学的に有意であったCEACAM6とMUC4のペア以外のタンパク発現も、一部の遺伝子間で発現が相関する傾向が見られた。すなわち、扁平上皮癌の悪性度に関与する遺伝子は機能的な相互作用ネットワークを構成している可能性がある。本研究課題には含まれていなかった事項であるが、この遺伝子間(またはタンパク質間)相互作用ネットワークを、今回のマイクロアレイ遺伝子発現情報にタンパク質の細胞内局在情報、系統プロファイルを加え、教師付き学習アルゴリズム(Yamanishi et al, 2004; Vert and Yamanishi, 2005; Yamanishi et al, 2005)を用いてその相互作用を予測・解析したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に使用した物品(一次抗体)の過半が前年度に購入済みであったことと、購入予定の一次抗体が入手できなかったため。 次年度使用額は、翌年度分として請求した助成金の一部と合わせて、物品費として主に使用予定である。
|
Research Products
(5 results)