2014 Fiscal Year Research-status Report
細胞間通信を担うエキソソームとがん発症との関連解析
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25460457
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
堺 明子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60205698)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エキソソーム / microRNA / 血漿 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞は特定のmiRNAを含む多量のexosome(エキソソーム;細胞膜小胞)を放出しており、周辺の微小環境の整備や遠隔転移の操作をおこなっていると考えられている。本研究の目的は、がん患者の血流に乗ったexosomeが、miRNAを介してがんの発症や進展に関与している様態を解明することである。 我々は、膵がん患者から3組の特徴的なグループを選び出し、血漿miRNAの発現パターンを比較した。具体的には、膵がん患者群として、short-survival、long-survival、low CA19-9、の3組、およびコントロールとして健常人1組について、それぞれ数人ずつの血漿をプールしてマイクロアレイ解析をおこなった。アレイチップ搭載の約2000種類のmiRNAのうち、1256種類について、少なくともいずれかのサンプルで発現がみられた。検出されたmiRNAの種類は、健常者血漿が最少であり(718種類)、がん患者血漿におけるmiRNAの発現増加を裏付けるものであった。膵がん3群のうちでは、short-survivalがもっとも多くのmiRNAの発現上昇を示した。また、腫瘍マーカーとしてのmiRNAがもっとも望まれるlow CA19-9群では、発現miRNAの種類が健常人に次いで少なく、また、発現変動の頻度も、他の2群と比べて明らかに低かった。 これらの傾向を踏まえ、アレイで得られた結果が、他の手法でも再現できることを確認し、それぞれのグループから、健常人血漿と比べて発現変動の見られるmiRNAを選択し、これらの特徴的指標としての信頼度を確認中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血漿中のmiRNAの発現変動について定量的な解析をおこなった結果、がんの中でも特に早期発見が困難な膵がんについて、発現変動する複数の血漿miRNA候補を特定した。がんの進展度と関連するmiRNAの組合せについて、より精度を上げる作業を進めているが、おおむね予想内の進行状況である。 なお、血漿全体のmiRNAとexosome miRNA間での差異について調べたが、現在のところ大きく差があるものはみられなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、現在までに候補として選択した膵がん特異的miRNAのセットを用いて、培養細胞に与える影響を評価する。 血漿miRNAの特徴のひとつに、複数回の凍結融解にも耐えうる安定性があるが、実際にこの頑健性は、exosome miRNA、あるいはAgo2等とのタンパク質複合体miRNAのどちらにも見られ、非侵襲性マーカーとしても、デリバリーキャリアとしても、非常に有利な点である。Exosomeの情報通信面での機能解析のため、それぞれの形での導入をおこなって、両者の効果を比較することで、これらの機能差を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は膵がん血漿miRNAのプロファイリングをおこない、特異的発現パターンの候補miRNAを絞り込むための検証を進めた。血漿miRNAのqRT-PCR定量においては、非常に高い再現性が認められた。そのいっぽう、内部標準について、より信頼性の高い解析方法の検討が必要であったことから、細胞レベルでの主要な導入実験を次年度にまとめておこなうことにしたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定に沿って、exosomeの情報伝達機能に焦点を絞った解析をおこなうために必要な試薬・キット等を購入する。
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