2014 Fiscal Year Research-status Report
キメラがんタンパクTLSーCHOPによる多段階発がん機構の解明とその臨床応用
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25460480
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
及川 恒輔 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (70348803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村垣 泰光 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40190904)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | キメラ遺伝子 / 発がん機構 / 粘液型脂肪肉腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
粘液型脂肪肉腫の大多数には染色体転座に起因するTLS-CHOPキメラ遺伝子が存在し、その遺伝子産物は腫瘍特異的な転写因子として重要な役割を担っていると考えられている。これまでの研究により、TLS-CHOPは、腫瘍化活性を持つDOL54と腫瘍の増殖・転移を促進するPAI-1の発現誘導、及び抗腫瘍活性を持つMDA-7の発現抑制に関与することが分かってきた。しかし、粘液型脂肪肉腫の発生・進展機構の詳細についてはまだ不明な点が多い。平成26年度は以下の項目で研究を行なった。 1. DOL54の発現誘導を介した腫瘍化促進メカニズムの解明。 DOL54の発現誘導分子経路において介在が示唆された分子群については、その関与を検証する実験を遂行中である。一方、DOL54による腫瘍化促進メカニズムについて、DOL54のノックダウンは粘液型脂肪肉腫細胞の増殖抑制を導くが、DOL54とMDA-7をダブルノックダウンするとその増殖抑制がなくなることを発見した。従って、DOL54ノックダウンによる増殖抑制にMDA-7の抗腫瘍活性が関与することが示唆され、TLS-CHOPによるMDA-7発現抑制にDOL54の発現誘導が必須であると想定された。現在、その確定作業と分子メカニズムの検討を行なっている。 2. 新規関連分子群のノックダウンや過剰発現による腫瘍抑制効果の検討。 TLS-CHOPに発現抑制されるmicroRNA群の中でmiR-499-5pを粘液型脂肪肉腫細胞に導入すると細胞死を誘導することを見出した。また、miR-499-5pの標的遺伝子の候補の1つであるSOX11をノックダウンしても顕著な細胞死誘導が見られた。従って、粘液型脂肪肉腫の発生・進展機構の解明はもちろん、新規分子治療法の開発を考える上でもSOX11の粘液型脂肪肉腫における機能の詳細な検討が必要となってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DOL54の発現誘導分子経路に介在する分子群の同定については、可能性のあるmicroRNA群やタンパク群が既に多く示唆されているが、未だに確定するには至っていない。これは技術的な問題や使用している抗体の質の問題などが考えられ、さらなる工夫が必要であると考える。一方、当初、DOL54による腫瘍化促進メカニズムとMDA-7発現抑制よる腫瘍細胞維持機構は、互いに何らかの相互作用がある可能性を考慮しつつも、TLS-CHOPの下流でそれぞれ独立した分子経路で制御されていると想定して研究を行なってきたが、26年度の研究結果により、DOL54がMDA-7の発現抑制に寄与していることが強く示唆された。また、TLS-CHOPに発現抑制を受けるmicroRNA群の中からmiR499-5pの発現抑制と、その標的分子の1つと予想されるSOX11の発現が、粘液型脂肪肉腫細胞の維持に必須であることを発見した。miR-499-5pやSOX11とDOL54、MDA-7の発現制御との関連性は今のところ見出されていない。これらの研究結果は、粘液型脂肪肉腫の腫瘍発生・進展機構の全貌を理解するために重要な新事実であると思われ、本研究の目的達成において大きな進展であると言える。従って、研究計画に比べて遅れている部分がある反面、当初の想定外の分子経路の存在を示唆する結果が得られたという進展が見られたことから、全体としては、まずまず順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は本研究助成のプロジェクトの最終年度であるため、基本的に研究成果をまとめていく方向で遂行していく。具体的には、まず、DOL54の発現誘導とMDA-7の発現抑制による腫瘍化促進メカニズムにおける分子経路の解明を最優先で進めていく。その際、技術的にうまくいっていない部分については、別の手段による検証法を積極的に検討していく。また、粘液型脂肪肉腫におけるmiR499-5pの発現抑制とSOX11の発現が関与する分子メカニズムについては、これらの分子の発現状況の変化に応答する分子群の同定や機能解析を通じて、その機能的役割の輪郭を明らかにしていく。さらに、粘液型脂肪肉腫の発生・進展におけるこれらのメカニズムと、腫瘍細胞の増殖・転移に関わるPAI-1発現誘導の分子経路との関係性も検討し、来年度以降の新規研究プロジェクトの足がかりとなるようなデータを出す。
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Causes of Carryover |
平成26年度は交付申請書に記載した当初の研究計画よりは多くの助成金を使用し精力的に研究を進めたものの、25年度からの繰越金がかなり多く60万円近くあったために、結果として次年度使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は本研究計画の最終年度であるので、研究費を惜しまず使用し成果を挙げていく。具体的には、多種類のmicroRNA、siRNA、抗体や、遺伝子及びタンパク質解析関連試薬の購入にその大部分を使用し、その他、学会参加費や論文投稿費として使用する予定である。
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Research Products
(9 results)