2014 Fiscal Year Research-status Report
新規c-kit低発現マウス造血幹細胞の特性と老化における役割の解明
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25460483
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
佐々木 豊 関西医科大学, 医学部, 准教授 (80425066)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 / G0 / c-kit |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はHSCが高度に純化されたマウス骨髄CD150+CD48-Lin-Sca-1+c-kit+分画をc-kit発現強度により細分し、G0期HSCがc-kit低発現分画 (c-kitlow)に高度に濃縮されていることを明らかにしてきた。このc-kitlow細胞の特性のさらなる解明を行い、幹細胞性維持・制御に関与する因子の同定を試みている。c-kitlow細胞は、c-kit発現レベルが低いことから、c-kitリガンドであるstem cell factor (SCF) に対する反応性がc-kit高発現分画 (c-kithigh)細胞とは異なることが容易に推測されるが、実際、SCF存在下の無血清培養において、c-kitlow細胞の初回分裂はc-kithigh細胞のそれより24~40時間程度遅れる。しかしながら、この遅延は、c-kit発現量とは無関係と思われるthrombopoietin (TPO)およびinterleukin (IL)-11においても認められ、G0期HSCの普遍性な特性であると考えられた。また、SCF、TPOおよびIL-11には、c-kitlow細胞の維持、増殖において相加、相乗効果が認められた。次にin vivoにおいても両細胞分画に質的差異が存在するかどうか明らかとするため、マウスにBrdU (Bromodeoxyuridine)を10日間投与の後、経時的に骨髄中の造血幹胞分画を解析し、BrdU標識の減衰割合とc-kit発現強度の間に関連性があるかどうか検討を行った。BrdU陽性HSC分画細胞は、観察開始後4か月までに速やかに減少し、8か月の観察期間内でほぼ消失した。この間、c-kitlow細胞とc-kithigh細胞の間にはBrdU減衰における明確な相違は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予想と異なり、BrdU投与後のBrdU標識減衰率には、c-kitlow細胞とc-kithigh細胞の間に明瞭な差異は認められなかった。これが手技的問題による帰結である可能性を排除するため、追加的検証として、BrdUの代わりにビオチンを投与し、膜表面に結合したビオチンの細胞分裂による減衰を計測することとした。実際、この検討は開始されたが、開始後飼育室の一部に発生した感染事故によって、実験を中断、全ての動物を廃棄せざるを得なくなり、再度実施する必要はあるが、開始は27年度となる予定である。当初の計画では、[4) 非対称性分裂がc-kitlowHSCを作り出す可能性を検討する]の項目を26年度以降に行うとしているが、これは27年度に実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、ビオチンが投与されたマウス骨髄造血幹細胞分画におけるビオチン標識を経時的に解析し、BrdU投与実験による結果と比較検討することから、結果の信頼性を高めたい。また、c-kitlow細胞の分裂像をイメージングフローサイトメーター等を用いて同定し、その特性を明らかとする。さらに、DNAアレイデータを基に、c-kitlow細胞とc-kithigh細胞の発現分子にどの様な差異が存在するか、逐一検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
年度末に納品された、一部の物品費支払いが4月以降となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬等の物品費支払いに充当する。
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