2013 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of pathogenesis of mesial temporal epilepsy using monogenic mouse model
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25460493
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
浅井 真人 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (70543536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 篤 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20432255)
浅井 直也 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80273233)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 側頭葉てんかん / モデルマウス / 実験病理学 / てんかんビデオモニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
側頭葉てんかんは、海馬とその周辺を焦点とするてんかんの一種で、発作中夢うつつに行動する自動症が特徴である。一部の人は夢うつつのまま車を運転する暴走事故を起こし、また一部の人は異常な色覚体験や精神体験により芸術を生み出す。どちらも辺縁系過剰活動という側頭葉てんかんの特性をよく表している。名画「星月夜」を描いた画家フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890) も典型的な側頭葉てんかん患者であり絵画の独創性だけでなく衝動的行動でも有名だった。側頭葉てんかん患者の脳には特徴的な病理所見が見られる。1つは歯状回顆粒層の整列が乱れる「歯状回顆粒層分散」、もう1つは海馬を中心としてグリア細胞の増生と突起の腫大化がおこりCA1が著しく萎縮するのに海馬支脚は保たれる「海馬硬化」である。側頭葉てんかんの治療は外科的な海馬切除以外に有効なものがない。治療を困難とする理由は側頭葉てんかんがどうしておこるのかほとんど分かっていないことと、適切な動物モデルがなかったことである。我々の研究室で細胞骨格アクチンを研究する途上で偶然側頭葉てんかんを忠実に模倣するマウスを得た。このマウスは衝動的な行動、典型的な歯状回分散と海馬硬化を呈し、脳波計では海馬を起源としたてんかん波をおこす。このマウスは将来側頭葉てんかんの機序解明のヒントとなり、しかも治療法を実際試すことができるモデルになる可能性が高い。今年度は主にマウスのてんかん発作が必ず100%の個体におこることを連続ビデオモニターで確認する作業を開始した。これまで100日におよぶ24時間連続撮影ですべてのマウスが側頭葉てんかんの最重症発作である「大発作」を毎日数回コンスタントにおこし、しかも発作がすべて睡眠中におこり食事中には決して起きないことを確認した。理化学研究所と共同でヒト側頭葉てんかん患者のゲノム解析も行い患者特異的な変異を一つ発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
側頭葉てんかんの単遺伝子変異によるモデルマウスは2014年現在になってもまだ当研究室以外にはないと思われる。てんかんの浸透率が100%であることを画像で残すために市販の新世代防犯カメラの暗視機能や動体検知機能を用いて大発作回数を完全に記録することに成功した。大発作は他の低いレベルのてんかん発作に比べて客観性が最も高く、また数を数えることが可能だからである。臨床的にも大発作の回数が最も患者や家族が減少を望むものだからでもある。現在まで撮影された全個体が毎日コンスタントに大発作をおこしている。これは将来治療法を判定する上で非常に重要な性質である。研究室ではこの遺伝子のノックアウトでてんかんがおこる根本原因についてもセルラインPC12を用いて進めており順調である。理化学研究所と共同研究により現在までに側頭葉てんかん患者1名でヘテロの新規変異を同定し、これは313人のてんかんをもたないコントロールには同定されなかった。これは予期しないほど早い進展である。以上、するべき仕事が概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
てんかんの原因を考える上でヒントとなりうるのはこのマウスの腸における表現型であろうと考えている。この遺伝子は小腸の吸収上皮微絨毛で発現しておりおそらく膜とアクチン線維を結びつける仲立ちをしている。まだ予備的データであるが、この遺伝子を喪失すると西洋では罹患率が高いセリアック病と非常に類似している表現型を示し、激しい栄養吸収障害、貧血、骨粗鬆症、脾臓萎縮、脂肪便、グルテン不耐症を示すようである。セリアック病と側頭葉てんかんの関連は古くから知られており、GWASによるセリアック病原因遺伝子候補の中にこの遺伝子の含まれる遺伝子座も含まれている。セリアック病の原因は微絨毛膜の透過性亢進であろうと思われていることを、てんかんに敷衍すればニューロンでの透過性亢進によるニューロトロフィンなどの過剰な放出が一義的な原因であろうと検討をつけin vitroでKCl脱分極によるBDNF放出をELISAで測定する系の構築に取り組んでいる。ゲノム解析で発見された新規変異を発現ベクターに導入してこのin vitroのモデルでテストする取り組みも行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度には研究の進捗により新しいマウスラインの購入など大きな予算を必要とすることが予想されるため平成25年度は研究基金支出を控えていたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
てんかん実験に用いる新しいマウスライン、その他の研究資材(画像蓄積用ハードディスク、脳波電極、誘発剤や治療薬、siRNA)を購入する計画である。
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[Journal Article] Detection of a soluble form of CD109 in serum of CD109 transgenic and tumor xenografted mice.2014
Author(s)
Sakakura H, Murakumo Y, Mii S, Hagiwara S, Kato T, Asai M, Hoshino A, Yamamoto N, Sobue S, Ichihara M, Ueda M, Takahashi M.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 9
Pages: e83385
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Loss of function of the melanocortin 2 receptor accessory protein 2 is associated with mammalian obesity.2013
Author(s)
Asai M, Ramachandrappa S, Joachim M, Shen Y, Zhang R, Nuthalapati N, Ramanathan V, Strochlic DE, Ferket P, Linhart K, Ho C, Novoselova TV, Garg S, Ridderstråle M, Marcus C, Hirschhorn JN, Keogh JM, O'Rahilly S, Chan LF, Clark AJ, Farooqi IS, Majzoub JA.
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Journal Title
Science
Volume: 341
Pages: 275-278
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] The REV7 subunit of DNA polymerase ζ is essential for primordial germ cell maintenance in the mouse.2013
Author(s)
Watanabe N, Mii S, Asai N, Asai M, Niimi K, Ushida K, Kato T, Enomoto A, Ishii H, Takahashi M, Murakumo Y.
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Journal Title
J Biol Chem
Volume: 288
Pages: 10459-10471
DOI
Peer Reviewed
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