Outline of Annual Research Achievements |
1)最終年度の研究成果 最終年度は, これまで解析途中の自活性線虫C. elegansおよび回虫成虫由来のミトコンドリア(Mit)分画のプロテオーム解析に集中的に取り組み, 以下の成果を得た。C. elegans Mit分画の二次元電気泳動ゲル(一次元:等電点, 二次元:SDS電気泳動)のほとんど全ての137の蛋白スポットについて, 等電点, 分子量を決定, それぞれを切り出し,トリプシンによる in gel消化後, 質量分析計で蛋白を同定した。また, 同時に泳動した一次元SDS電気泳動ゲルについて, 分離ゲルの開始地点から泳動先端の色素マーカーまでの領域を12の等間隔断片に分画し, それぞれをin gel消化して同様に解析したところ, 411個の蛋白を同定した。さらに, ショットガン法による解析の結果, 499個の蛋白を同定した。回虫成虫筋肉のMit分画については, 二次元電気泳動ゲルの蛋白スポットのうち, 60スポットを質量分析済みであるが, 残りは未分析である。しかしながら, 一次元SDS電気泳動ゲルについて同様に12の断片に分画して解析した結果, 116個の蠕虫由来の蛋白が検出され, そのうち回虫由来が48個, 残り68 がアニサキス, 馬回虫, C. elegansなど他の線虫類に帰属された。現在ショットガン法で解析中である。線虫類Mitの二次元電気泳動による解析はこれまでに例がなく, 特に嫌気的Mitのモデルといえる回虫Mit蛋白の分子構成がこれらの手法により明らかになることは, 低酸素適応のオルガネラレベルの解明を目指す意味でその学術的意義は極めて大きい。 2)補助期間中に得られた成果 本研究では,異なった酸素分圧を有する肺臓, 消化管, 皮下組織寄生の肺吸虫, 回虫, マンソン裂頭条虫をモデルとし, 主としてエネルギー代謝の中心的オルガネラであるMitの生化学的実体をプロテオーム手法を用いて解析した。その結果, これらの蠕虫は極めて類似した嫌気的Mitを組織特異的に発現して適応生存していることが明らかになった。
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