2014 Fiscal Year Research-status Report
トリパノソーマ原虫における複合型糖鎖合成経路のミッシングリンクの解明
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25460522
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
中西 雅之 松山大学, 薬学部, 准教授 (00281048)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Trypanosoma brucei / GnT-I / 糖転移酵素 / N-結合型糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,アフリカ睡眠病の原因原虫であるTrypanosoma bruceiにおいて,N-結合型複合糖鎖形成の初発段階を触媒する糖転移酵素TbGnT-Iを同定しようとするものである。 これまでに,TbGnT-I活性測定系の確立と,ミクロソーム画分に回収されるTbGnT-Iの可溶化および部分精製に成功し,TbGnT-Iの分子量は約400 kDaであることを明らかにした。一方で,英国のグループが逆遺伝学的手法によりTbGnT-Iをコードする遺伝子を同定したこと発表した。しかし,当該遺伝子(Tb927.3.5660)にコードされるタンパク質(TbGT11)が単独でTbGnT-I活性を発揮するのか,他のタンパク質との複合体形成等,別の因子を必要とするのかは明らかにされていなかった。 そこで,本年度は論文の検証を行うとともに,TbGnT-I活性のin vitroでの再構成およびTbGT11と複合体を形成するタンパク質の同定を試みた。T. bruceiで過剰発現させたTbGT11はTbGnT-I活性を示したことより論文内容の正しさが確認できた一方で,リポソーム存在下・非存在下の無細胞発現系および哺乳動物細胞発現系(COS7細胞)のいずれで発現させたTbGT11もTbGnT-I活性を示さなかった。このことから,TbGnT-Iの活性発現にはTbGT11に加えて,T. bruceiに存在する別の因子が必要であると考えられた。そこで免疫沈降法により,過剰発現させたTbGT11に結合するタンパク質を精製し,2種のhypothetical proteinの同定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,TbGT11を原虫で過剰発現させ,先行研究の検証を行うとともに,TbGT11以外のタンパク質がTbGnT-I活性の発現に必要か否か,必要であればそのタンパク質の同定を進めることを目指した。そのために,TbGT11を種々の発現系で作製し,in vitroでの酵素活性構築を目指した。TbGT11のC末端にHAタグを融合して,T. bruceiで発現させた場合,先行研究と同様の結果を得ることができた。また,本課題研究中に開発した方法で,T. bruceiから過剰発現タンパク質を可溶化し,未変性分子量がネイティブの酵素と同じであることも確認した。一方で,無細胞発現系や異種細胞を用いた発現系から得たTbGT11には,TbGnT-I活性が検出されないことから,原虫内でTbGT11と複合体を形成する未知タンパク質が必要であると考えられた。この結果を受けて,TbGT11と複合体を形成する2種のhypothetical proteinを同定した。これらをTbGT11と共発現させたところ,TbGnT-I活性は検出されなかったものの,in vitroでTbGT11と複合体を形成することは確認された。以上のことから,TbGnT-I複合体のin vitro再構築は部分的に達成されており,進捗状況はおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,TbGT11とともにTbGnT-I複合体を構成するタンパク質として,2種のhypothetical proteinを同定したが,現在までに機能的な複合体の再構築には至っていない。その理由のひとつとして,TbGT11が適切な翻訳後修飾を受けていないことが考えられる。翻訳後修飾は哺乳動物細胞でも可能であるが,COS7細胞で発現させたTbGT11がTbGnT-I活性を示さないことから,TbGnT-I活性の発現にはT. brucei独自の翻訳後修飾が関わっている可能性がある。その代表的なものが糖鎖修飾である。TbGT11には,C末端領域に3か所のN-結合型糖鎖修飾モチーフが存在するため,これらモチーフを各々または組み合わせて破壊したTbGT11をT. bruceiで発現させ,TbGnT-I活性への影響を明らかにする。また,引き続きTbGT11と複合体を形成するタンパク質の探索を行う。以上により,TbGT11を中心とした機能的なTbGnT-I複合体の再構築を行い,TbGnT-Iの全体像を明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究の遂行に必要な消耗品が,価格変動や値引きのため,合計として当初予定よりも若干安価に購入できたことにより,次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度に遂行する実験において,試行回数の増加等が見込まれるため,その費用に充当する。
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