2015 Fiscal Year Annual Research Report
病原細菌IpaHファミリーエフェクターの包括的機能解析
Project/Area Number |
25460527
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
芦田 浩 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (10535115)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 赤痢菌 / エフェクター / 自然免疫 / I型インターフェロン |
Outline of Annual Research Achievements |
赤痢菌が感染を成立させるためには、さまざまな生体防御反応と対峙する必要がある。生体側は感染初期に菌の侵入を感知、増殖を阻止する自然免疫系を発動することで、菌の感染を効果的に阻止する。しかしながら、赤痢菌はこれらの自然免疫応答による攻撃を看過するのではなく、III型分泌装置より一群のエフェクターを宿主細胞内に分泌することで抵抗する。赤痢菌のエフェクターであるIpaHファミリータンパクはE3 ユビキチンリガーゼ活性を有し、自然免疫応答抑制に寄与する。E3リガーゼ活性を有することから、IpaHファミリータンパクは赤痢菌感染により活性化される様々なシグナル伝達経路の因子を標的とし、そのE3リガーゼ活性により標的分子のユビキチン化修飾し、シグナル伝達を撹乱すると推測される。 病原細菌感染において細胞質中で菌体より遊離された二本鎖DNAや環状ジヌクレオチドは宿主のDNAセンサーに認識され、I型インターフェロン産生誘導により菌の感染を妨げる。赤痢菌感染において宿主のSTING分子が中心的な役割を担い、I型インターフェロン産生を誘導する。これに対し赤痢菌はエフェクターを分泌し、これに抵抗する。赤痢菌感染時の転写因子活性測定の結果、IpaHファミリーのうち、IpaH5が自身のE3リガーゼ活性依存的にI型インターフェロン活性化を抑制していることが明らかとなった。IpaH5のI型インターフェロン抑制機構を解析したところ、IpaH5はそのI型インターフェロンシグナル分子であるXと結合しユビキチン化修飾することを見出した。IpaH5によるユビキチン化されたXはプロテアソームによるタンパク分解へと導かれ、I型インターフェロン産生が抑制される。これにより菌に対する宿主免疫応答が抑制され、この間に菌は感染を拡大するといった新たな自然免疫抑制機構を明らかにした。
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