2013 Fiscal Year Research-status Report
レトロンとmsDNAによる病原性発現制御とゲノム進化における役割
Project/Area Number |
25460532
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
島本 整 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (90187443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島本 敏 広島大学, 生物圏科学研究科, 助教 (70583136)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 病原性 / レトロン / コレラ菌 / msDNA / ビブリオ |
Research Abstract |
これまでの研究で,コレラ菌(Vibrio cholerae)O1 El Tor株のレトロン-Vc95に含まれる機能未知のopen reading frame(ORF)にコードされている2つのタンパク質,ORF540とORF205がコレラ菌の病原性発現に関与している可能性が示唆されている。そこで,2つのタンパク質と相互作用するタンパク質をyeast two hybrid法によって探索したところ,ORF540についてはハイブリッド型sensor-kinaseとresponse regulatorが見つかった。また,ORF205についてはGlutamate-1-semialdehyde aminotransferase(HemL)が見つかった。HemLはヘムの前駆体の合成に関与していることから,呼吸や鉄の獲得など様々な生理的機能に関与している可能性が示唆された。コレラ菌の生理的機能の調節と病原性との関連を今後詳細に解析する必要がある。 また,これまでにレトロン-Vc95に含まれる逆転写酵素遺伝子(ret)によって合成されるmsDNA-Vc95がデコイとして機能する可能性を検証するために,ret遺伝子欠損変異株における遺伝子発現の網羅的解析から転写制御因子VC0176の関与が示唆されていた。本研究では,VC0176タンパク質を精製し,ゲルシフト法によってVC0177遺伝子のプロモーター領域とmsDNA-Vc95のDNA部分への結合を明らかにした。 さらに,Vibrio mimicusのレトロン-Vm129については,ret遺伝子と機能未知のorf319のそれぞれの欠損変異株を作製し,カイコ幼虫に対する病原性の違いを調べたところ,Salmonella Typhimuriumの場合と同様に,レトロン内の遺伝子の欠損によって病原性が若干強くなっていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,平成25年度の研究として「レトロンによって影響を受ける遺伝子群の解析」,「レトロン内の機能未知遺伝子の機能解析」,「カイコを利用した細菌の病原性解析」,「msDNAに特異的結合能をもつタンパク質の単離」を行うことになっていた。上記の研究実績の概要で述べたように,すべての研究計画がほぼ予定通りに順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として,ORF540と相互作用する2つのタンパク質はコレラ菌の細胞内シグナル伝達に関与していることから,欠損変異株を作製し野生株との違いを調べる。また,ORF205と相互作用するHemLについては様々な細胞内生理機能,特に抗酸化作用や鉄獲得の調節に関与している可能性が考えられる。そこで,さまざまな培養条件で野生株とorf205欠損変異株との比較を行い,機能との関与を明らかにする。 また,msDNA-Vc95のデコイとしての機能については,作用する候補遺伝子として見つかっているVC0176とVC0177について,欠損変異株を作製し解析を行う。また,実際にmsDNAがin vivoでデコイとして機能することを証明するためには,細胞内のmsDNA量に応じて遺伝子の発現状況が変化することを確認しなければならない。msDNAの発現量を調節し,候補遺伝子の発現量の変化を確認する必要がある。また,転写制御因子と考えられているVC0176が作用するコレラ菌の遺伝子を網羅的に調べるために,ChIP-seqの実験を計画している。そのために,Hisタグを導入したVC0176タンパク質が利用可能である。
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Research Products
(10 results)