2013 Fiscal Year Research-status Report
リケッチアのトロピズム決定および病原性発現の機構解明
Project/Area Number |
25460534
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
内山 恒夫 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (90151901)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | リケッチア / トロピズム / 病原性 |
Research Abstract |
リケッチアのトロピズムおよび病原性を解析するためには、患者非発生地域のマダニから非病原性のリケッチアを分離し、その性状解析をすることが重要であると考えた。徳島県の紅斑熱非発生地域で約1,500個体のマダニを採集した。形態学的にマダニ種を同定した後、マダニを個体ごとにすり潰して哺乳動物細胞 (Vero) およびマダニ細胞 (DALBE3、ISE6) に接種し、細胞変性効果、ヒメネス染色、免疫染色を指標として10株の紅斑熱群リケッチアを分離した。これらの分離リケッチアについて、宿主細胞への付着能、細胞内増殖性を解析した。その結果、いずれの分離株も哺乳動物細胞、マダニ細胞での増殖能が病原性リケッチアのRickettsia japonicaに比べて低いことが明らかとなった。さらに、これらの分離株の哺乳動物細胞(Vero, HeLa)への付着能はR. japonicaのそれに比べ、数%と低いことも示された。その結果、これらの分離株のVero細胞でのプラックサイズが非常に小さい原因および増殖能の低さが、主に宿主細胞への付着能の低さに起因していると考えられた。また、これらの分離株はR. japonicaと非常に高い交差抗原性を有しており、R. japonicaの主要表面抗原rOmpAに種特異的なモノクローナル抗体とは反応性を持たないものの、R. japonicaの同じく主要表面抗原のrOmpBに種特異的なモノクローナル抗体の一部と反応性を有する分離株も存在した。これらの結果は、これらの地域で患者が発生しないにもかかわらず、住民の約20%がR. japonicaに対する抗体を有する所以である可能性を示唆しており、紅斑熱の疫学を解析する上で重要な知見であると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標に照らして、まず、ある程度の期間と労力を要することが予想されたフィールドワークとしてのマダニ採集および形態学的なマダニ種の同定は順調に進展し、約1,500個体のマダニの採集と種の同定を行うことができた。また、接種細胞に細胞変性効果を惹起したものについて、さらに解析を行い、10株の紅斑熱群リケッチア分離株を得ることができた。さらに、それらについて、宿主細胞への付着能、増殖能の解析、抗原性解析等を行うことができた。これらの解析には一年半程度を要するものと考えていたが、順調に行うことができ、ほぼ一年で当初の目的を達することができた。これらの結果により、徳島県吉野川以北の地域で患者が発生しないにもかかわらず、ある程度の割合の住民がR. japonicaに対する抗体を有している理由が推察されたことも、研究の順調な進展を示すものと考える。一方で、以上の研究にほとんどの時間を割いたため、それ以外に並行して行うことを計画していた「リケッチアの付着・侵入・増殖過程で機能する外膜蛋白質の同定」については、Sca1-4、RickA外膜蛋白質、繰り返し配列欠失rOmpAを菌体表面に発現する組換え大腸菌の作製段階であり、記載できる結果を得るには至っておらず、また、「リケッチアの宿主細胞内増殖の制御の解析」についても、細胞死、オートファジー、抗菌ペプチド、インターフェロン、ISG15、UBP43の関与について解析途中である。また、並行して行う予定であった「リケッチアに存在する病原性関連遺伝子ホモログの発現動態の解析」については、研究の端緒についたばかりであり、今後の進展を図りたい。総合して、最も時間・労力を必要とする最初の段階をクリアし、さらに進んで一定の結果を得ており、おおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度と次年度のもっとも大きな目標であった患者非発生地域のマダニからの紅斑熱群リケッチアの分離および同定を今年度中に終了でき、また、分離株の性状解析も一部行うことができた。そこで、次年度は得られた非病原性と推測される分離株および既存の病原性の紅斑熱群リケッチア株を用いて「リケッチアの付着・侵入・増殖過程で機能する外膜蛋白質の同定」を行い、分離株と病原性株との違いを解析する。この解析は、以前、外膜蛋白質のひとつであるrOmpBの解析で用いた方法を用いて、それぞれの外膜蛋白質を大腸菌の表面に発現させ、種々の宿主細胞に接種するという実験系により行う。また、「リケッチアの宿主細胞内増殖の制御の解析」については、これまでに細胞死、あるいは、オートファジーが関与するという知見を得ており、これらについてさらに分子レベルでの解析を進める予定である。さらに、抗菌ペプチド、インターフェロン等の関与についても解析を進める。「リケッチアに存在する病原性関連遺伝子ホモログの発現動態の解析」については、mRNA発現の解析を始めたばかりであるが、これをさらに推進する。これと並行して、各遺伝子の組換え蛋白質に対する抗体をマウスで作製し、これを用いて蛋白質レベルでの発現の解析を行い、リケッチアで実際に機能している病原性関連遺伝子を同定する予定である。以上の解析に関しては次年度および次々年度の前半までを計画しており、それらの結果をもとに、最後の半年を費やして、不足実験の追加、再現性確認、研究の総括等を行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年3月納品となり支払い完了していないため、次年度使用額が生じた。 平成26年4月に支払い完了予定である。
|
Research Products
(3 results)