2014 Fiscal Year Research-status Report
リケッチアのトロピズム決定および病原性発現の機構解明
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25460534
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
内山 恒夫 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (90151901)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リケッチア / トロピズム / 病原性 / 系統樹 / 祖先群 / 紅斑熱群 |
Outline of Annual Research Achievements |
リケッチアのトロピズムおよび病原性は媒介節足動物、終末哺乳動物の細胞への付着侵入能および増殖能に大きく依存していると考られた。紅斑熱非発生地域のマダニは非病原性、あるいは病原性が非常に低いリケッチアを保有しているという仮説のもとに、マダニを採集し培養細胞にてリケッチアを分離した。前年度までに、これらの分離株がVero細胞HeLa細胞等の哺乳動物細胞およびDALBE3細胞ISE6細胞等のマダニ由来細胞への付着能および細胞内増殖能が低いが、病原性の紅斑熱群リケッチア、Rickettsia japonicaと非常に高い交差抗原性を有していることが明らかとなっていた。 平成26年度において、さらに、これらの分離株について、紅斑熱群リケッチアの標的細胞である血管内皮細胞の初代培養細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞[HUVEC]およびヒト皮膚微小血管内皮細胞[HMVEC-dBINeo])への付着能、細胞内増殖能が低いことが明らかとなった。また、分離した10株のうち特に7株は増殖能が著しく低かった。この結果は、この地域で患者発生が認められないものの、住民の約20%がR. japonicaに対する抗体を保有している事実と合致するものであった。 また、分離株について細菌共通の16S rRNA (rrs)遺伝子 、クエン酸合成酵素(gltA)遺伝子、およびリケッチア特異的なompA遺伝子、ompB遺伝子、遺伝子D (=ps120=sca4)の塩基配列を決定し、系統樹解析を行った。その結果、1株は祖先群のR. bellii等に近縁のリケッチア、他の1株はR. tamuraeに近縁の紅斑熱群リケッチア、他の7株はR. japonicaに非常に近縁の紅斑熱群リケッチアであることが明らかとなり、この結果もこの地域の疫学的状況と非常によく合致するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までのところ、完了していない実験はあるが、初年度、および、平成26年度の研究はかなり時間と労力を要することが当初より予想されており、また、非病原性と考えられるリケッチアの分離・同定、付着能・増殖能等の性状に関する解析は終了しているので、おおむね順調に進展していると思われる。 それ以外で、「リケッチアの付着・侵入・増殖過程で機能する外膜蛋白質の同定」に関しては、いくつかの外膜蛋白質を菌体表面に発現する組換え大腸菌を作製しており、引き続き付着侵入実験を行う予定である。さらに、分離株および病原性株の主要外膜蛋白質rOmpBを菌体表面に発現する大腸菌のいくつかについても作製が終了しており、培養細胞への付着・侵入能を解析する予定である。また、「リケッチアの宿主細胞内増殖の制御の解析」についても、様々な因子の関与を解析中である。「リケッチアに存在する病原性関連遺伝子ホモログの発現動態の解析」についても現在進行中である。このように、実験が終了していない項目に関しても、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度までの目標であった日本紅斑熱患者非発生地域に生息するマダニからの紅斑熱群リケッチアの分離・同定・性状解析をほぼ終了することができた。また、外膜蛋白質の機能解析についても一定の進展をみた。これに関してはリケッチアの付着侵入能の中心的分子であるrOmpBを中心に、大腸菌表面にこれらを発現させた系を用いて、解析を推進する予定である。また、「リケッチアの宿主細胞内増殖の制御の解析」については細胞死、オートファジーの重要性が示唆されており、この点に関してさらに研究を進める。「リケッチアに存在する病原性関連遺伝子ホモログの発現動態の解析」についてはmRNA発現の解析を引き続き進める。 以上の解析については、最終年度の前半の終了を目指し、最後の半年は再現性確認あるいは不足実験に充て、研究の総括を行う予定にしている。
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Causes of Carryover |
平成27年3月納品となり支払い完了していないため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年4月に支払い完了予定である。
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[Journal Article] The intracellular pathogen Orientia tsutsugamushi responsible for scrub typhus induces lipid droplet formation in mouse fibroblasts2014
Author(s)
Ogawa, M., Fukuhara, M., Satoh, M., Hanada, K., Saijo, M., Uchiyama, T., Ando, S.
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Journal Title
Microbes and Infection
Volume: 16
Pages: 962-966
DOI
Peer Reviewed
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