2014 Fiscal Year Research-status Report
レプトスピラ症の感染成立から重症化に至るまでのメカニズムの解明と予防方法の開発
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25460536
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
齋藤 光正 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00315087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 健一郎 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00346777)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | レプトスピラ / 黄疸 / 細胞間接着 / 肺出血 / 腎不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、重症型レプトスピラ症(ワイル病)の主症状のひとつである黄疸のメカニズムについて、感染動物モデル(ハムスター)の肝臓を走査型電子顕微鏡で経時的に解析することにより明らかにした。 レプトスピラ感染5,7,8,9日後、ハムスターを各2匹ずつ麻酔下に開胸し、ホルムアルデヒドとグルタールアルデヒドで灌龍固定を行い、肝臓を摘出した。試料は、細胞断面の観察に適した凍結割断法と、細胞間の観察に適した交叉切断法の2つの方法を用いて作成した。 観察の結果、次のような病態が明らかになった。感染したレプトスピラは、血行性に肝臓にたどり着き、類洞からディッセ腔内へと侵入する。正常肝臓組織においては肝細胞間にタイトジャンクションで裏打ちされた毛細胆管が形成されており、肝細胞で生成された胆汁はこの管腔内に排泄される。ディッセ腔内に侵入したレプトスピラは、一斉に肝細胞間に侵入を始め、細胞間接着を剥がし、やがては毛細胆管の構築を破壊する。その結果、胆汁排泄障害を引き起こし、胆汁が血中に逆流して黄疸を生ずる。血中のビリルビンを同時に測定すると、毛細胆管が破壊される時期と一致して、ビリルビン値が一気に髙値になることもわかった。なお、ウイルス性肝炎でみられるような肝細胞壊死はほとんど認められない。 他のいろいろな感染症や代謝疾患など黄疸をきたす疾患は数多くあるが、肝細胞間隙を剥がすことにより黄疸を引き起こす疾患は例がない。 レプトスピラの肝細胞間への侵入性は、ハムスター肝臓からコラゲナーゼを用いて分離した肝細胞対 (hepatocyte couplets) にレプトスピラをin vitroで感染させることでも確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度には、ヒト皮膚ケラチノサイトであるHaCaT細胞のモノレイヤーをレプトスピラが通過することを発見した。平成26年度は、肝細胞間をレプトスピラが侵入、破壊することにより黄疸を引き起こすことを明らかにした。レプトスピラ症の多彩な病態は、「細胞間接着の破壊」というメカニズムでかなり部分の説明が付くという仮説を立てているが、これを裏付ける重要な現象を見出すことができたと考えている。その分子メカニズムの解明を最終目標としているが、現在までに成果は得られておらず、最終年度において解明を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、細胞間接着を破壊するメカニズムの解析を行う。HaCaT細胞のモノレイヤーにレプトスピラを感染させ、細胞間接着の各分子を蛍光免疫染色しその変化を観察する。肝細胞の解析については、肝細胞間に侵入する際にどの分子を認識しているのか、どのようにしてタイトジャンクションを破壊するのか、を明らかにしたい。ところで、細胞間接着分子の抗ハムスター抗体は入手不可能であり、抗マウス抗体を試してみたがうまく染まらなかった。最近我々は、幼若ラット(日齢14以下)もレプトスピラ感受性で、ハムスター同様に黄疸、出血をきたして死亡することを発見した。感染動物モデルとして使用可能であると考えている。ラットの細胞接着分子に対する抗体は容易に入手できるため、次年度はラットを用いた実験を試してみたい。 また、レプトスピラ症の肺出血、腎不全の病態解析については、血管壁構造、尿細管構造の変化に注目しながら電子顕微鏡観察を続け、主に形態学的アプローチで病態メカニズムの解明を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、実験のかなりの時間を電子顕微鏡観察による形態学的解析に割いたため、当初計画よりも試薬、消耗品の使用額が減少し、その結果次年度使用額が生じた。本来平成26年に着手する予定であった動物実験、細胞実験は平成27年度より行う予定としており、平成27年度はむしろ当初計画よりも多くの物品費が必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、出血、腎不全のメカニズム解析を行うにあたり、実験動物(ハムスター)と血液生化学分析費用が必要となる。また、レプトスピラの細胞間侵入の解析には、分子標的に対する抗体が不可欠である。以上より、最終年度は当初計画よりも物品費の支出が多く見込まれる。使用計画は以下の通りである。 物品費:1,000千円:、旅費:400千円、人件費・謝金:100千円、その他:100千円
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Research Products
(20 results)
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[Journal Article] Leptospira-rat-human relationship in Luzon, Philippines.2014
Author(s)
Villanueva SY, Saito M, Baterna RA, Estrada CA, Rivera AK, Dato MC, Zamora PR, Segawa T, Cavinta LL, Fukui T, Masuzawa T, Yanagihara Y, Gloriani NG, Yoshida S
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Journal Title
Microbes Infect
Volume: 16
Pages: 902-910
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] PCR and culture identification of pathogenic Leptospira spp. from coastal soil in Leyte, Philippines after a storm surge during Super Typhoon Haiyan (Yolanda).2014
Author(s)
Saito M, Miyahara S, Villanueva SY, Aramaki N, Ikejiri M, Kobayashi Y, Guevarra JP, Masuzawa T, Gloriani NG, Yanagihara Y, Yoshida S
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Journal Title
Appl Environ Microb
Volume: 80
Pages: 6926-6932
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Development and evaluation of vaccines using 5 Leptospira serovars prevailing in the Philippines.2015
Author(s)
Villanueva SY, Yanagihara Y, Saito M, Baterna RA, Estrada CA, Rivera AK, Segawa T, Ozuru R, Ikejiri M, Hidaka Y,Wang C, Gloriani NG, Yoshida S
Organizer
第52回レプトスピラ・シンポジウム
Place of Presentation
岐阜
Year and Date
2015-03-28
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