2014 Fiscal Year Research-status Report
新興病原体Escherichia albertiiの疫学および病原性の解明
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25460539
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
大岡 唯祐 宮崎大学, 医学部, 助教 (50363594)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Escherichia albertii / ゲノム解析 / 病原性 / 保菌宿主 |
Outline of Annual Research Achievements |
Escherichia albertiiは、近年同定された大腸菌近縁の腸管感染症起因菌である。申請者らは、国内外で発生した食中毒の検査において非典型的な大腸菌として分離された株の中に本菌が数多く存在し、本菌がヒトでも重要な下痢症起因菌であること、また、本菌に”志賀毒素産生菌”が含まれ、食品衛生法だけでなく、感染症法でも注意すべき菌種であることを示している。しかしながら、基本性状や病原機構、生息域や各種動物での常在性など未だ不明な点も多い。申請者は、ヒト下痢患者や各種動物から分離したE. albertii 30株について、ゲノム解析を行い、種特異的な病原性関連あるいは代謝関連遺伝子群を多数同定した。また、種特異的領域を標的としたmultiplex PCR検出系や環境サンプルからの検出感度を上げるためのnested PCR反応系を開発し、種々の野鳥便に対する検出を行った。さらに、病原機構や種の特性となる因子をコードする可能性のある遺伝子群について、変異株の作製を進め、培養細胞への感染実験等による機能解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画として、①E. albertiiのmultiplex PCRによる検出系の改良、②検出PCR陽性検体からの菌株の分離同定、③分離した常在株のドラフトゲノム解析、④ゲノム比較解析のためのシステム構築、⑤培養細胞への感染実験による病原機構の解析ならびに種の特性の解明の5項目を計画した。 項目①に関しては、解析対象を環境へ拡げた場合に通常のPCR検出系では検出感度が低いことから、昨年度作成したprimerセットをさらに改良したnested PCR反応系を開発し、検出効率を上げることに成功した。また、構築したシステムを用いて、野鳥便における保菌状況を解析中である。項目②については、ブタ及びニワトリのPCR陽性20検体から、菌株の分離を試み、現在までに6検体からの菌株の分離同定に成功している。項目③については、効率よく解析を進めるため、野鳥便からのPCR検出と陽性検体からの分離培養が終わり、菌株数が10株を越えた段階で行うこととした。項目④については、系統解析や遺伝子保有などゲノム比較解析のためのシステム構築を行った。項目⑤に関しては、病原関連候補遺伝子群や種の特性に関わる遺伝子群の変異株の作製を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、E. albertiiの種特異的配列を標的としたmultiplex PCRおよびnested PCRを完成させる。これまでに各種動物から分離同定された株は全てlocus of enterocyte effacement (LEE領域)にコードされたIII型分泌系を保有する株であることから、野鳥および環境に解析対象を広げて菌の検出・分離同定を行い、非病原株(LEE領域非保有株)の存在有無を明らかにする。また、作製した病原関連候補遺伝子群や種の特性に関わると考えられる遺伝子群の変異株ならびに各遺伝子産物に対する抗体を用いて、感染実験等を行うことにより、E. albertiiの病原性と種の特性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
H26年度は、E. albertiiの検出系に関して、multiplexPCR系と環境検体からの検出感度を上げるためのnested PCR系の構築、また、選択培地の開発を目的とした。しかしながら、multiplex-およびnested-PCRによる検出系については成果があったものの、選択培地に関しては、大腸菌との鑑別指標として利用可能な基質の同定はできたが、E. albertiiのみを選択的に培養可能にできる基質の同定するには至らなかった。また、病原機構ならびに種の特性を解明するための感染実験については、変異株作製が進行中であり、個別の遺伝子に対する感染実験を行うまでには至らなかった。加えて、申請者が、H27年4月に研究機関を異動することとなり、異動後の研究機関での実験機器の整備のため、次年度の物品費としての使用額を多めに設定した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度(平成27年度)は、①異動後の研究機関における小型超低温槽を含む実験機器・器具の購入、②E. albertii検出用のmultiplex PCRおよびnested PCRを完成のためのprimer作製およびPCR試薬の購入、③PCR検出系を用いた環境および野鳥からのPCR検出と分離同定のために必要な試薬(検出培地及びPCRスクリーニング)、④分離した常在株のドラフトゲノム取得とゲノム比較解析、⑤感染実験関連(変異株作製試薬、細胞培養試薬、実験動物の購入)と解析候補遺伝子にコードされる蛋白に対する抗体作成に使用する。また、京都と大阪、で開催される国内学会への発表および論文発表を予定しており、その費用として使用する。
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