2015 Fiscal Year Research-status Report
粘膜投与型新規結核ブースターワクチンに用いるアジュバントの有効性とその作用機構
Project/Area Number |
25460558
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
前山 順一 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 主任研究官 (40199641)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊保 澄子 福井大学, 医学部, 特命講師 (80151653) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | アジュバント / ワクチン / CpG-DNA / 粘膜免疫 / 形質細胞様樹状細胞 / インターフェロンα / 抗体 / 遅延型過敏反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにブースターワクチン候補の遅延型過敏反応(DTH)での有効性評価系をモルモットの皮膚反応およびマウスの足蹠反応で構築した。マウスにBCGによる基礎免疫を行ったところ、BCGに対する感受性がモルモットと異なり、BCGワクチン株のサブポピュレーションをモルモットの100倍量接種した場合でも弱いDTHしか示さなかった。したがってその用量の投与の基礎免疫でヒト成人での減弱した抗結核免疫を示すモデル系としてブースターワクチン候補を投与した。G9.1添加または無添加の結核菌抗原を投与したとき、精製ツベルクリン接種でのDTHがG9.1添加結核菌抗原免疫群でBCG基礎免疫群より顕著に増強した。一方、結核菌に対する防御効果については、無処置群と比べ感染菌数が1/10程度となる結果は得られたが、さらに有効性を高めるために免疫条件の検討が必要であることが分かった。 また、モルモットを用いた系で、分泌タンパク質等数種の結核菌抗原を用いたが、いくつかの抗原においてG9.1の添加で抗原単独投与に比べDTHの低下が認められた。これは、短期間の免疫スケジュールの影響と推定できる場合もあったが、抗体産生ではそのような現象は認められなかったので、その機構の解明はより有効な結核ワクチンの開発に資すると考えられる。 これまでマウスにおけるG9.1(CpG-ODN)による粘膜アジュバント作用は、粘膜近傍のpDC等により産生されるIFNαが重要な因子であることを示してきた。このマウスについて、脾臓細胞を採取し、in vitroで抗原刺激したところ、インターフェロンγ(IFNγ)産生の増強が認められた。一方、インターロイキン(IL-)4は明確でなかったが、IL-5については産生が認められた。IFNγおよびIL-5は、粘膜IgA産生に関与するので、これらがIFNαによる抗体産生に関与している可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度に関しては、動物を用いた有効性の評価法構築に関する基礎的な検討が中心であったため、今後は、学術的観点からG9.1の作用機構を細胞・遺伝子・分子レベルの反応について検討し研究を進めてゆく必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、有効性の評価法構築に関する基礎的な検討が中心であったが、今後、学術的観点からG9.1の作用機構の研究をさらに進めてゆく必要がある。動物を用いた実験については主に基礎的な免疫反応の解析が中心であり、さらに細胞・遺伝子・分子レベルの反応について検討することによって研究がより推進するものと考えている。したがって、今後粘膜アジュバントの作用機構については、マウスを中心に、形質細胞様樹状細胞がG9.1によって活性化した以降の抗体産生や細胞性免疫増強へ至る経路に関係する他の細胞や因子を解明する。すなわち関与する細胞の同定やそれらの細胞から産生されるサイトカインや表面マーカー等の検討、並びに関連因子やその作用対象の探索を通じて作用機構を解明する。その比較検討に、当初の計画通り、既知の粘膜アジュバントである組換えコレラ毒素Bサブユニットとの比較から検討する予定である。それとともに、培養細胞等を用いたin vitroの系での検討も今後の計画を踏まえて準備する。 一方、モルモットおよびマウスを用いてワクチン候補の免疫条件を検討し、結核ブースターワクチンの開発の道筋を明らかにして行く方策にも力を入れてゆく。BSL3動物実験室での感染実験の準備は整ったので、アジュバント等も含めたワクチン候補の有効性評価も進むと考えている。
|
Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが平成28年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定のものが一部含まれている。また27年度は、計上していた国際学会への参加・発表を見送ったことも起因する。多年度にわたる計画の多くの動物実験を優先的に進めてきたが、まずは、簡便な抗体産生やDTH等基礎的な免疫反応の解析を中心に進めてきたため、その後に続く個々の実験の最終段階で採材した検体を保存してあり、それらの解析に必要な高額なアッセイキット・抗体・酵素等の購入がなされていない場合がある。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
まず予定していた解析用のアッセイキット・抗体・酵素等を購入し、動物実験で得られた検体の解析を終了させる等、個々の実験計画が順次終了するに伴い、本研究計画の期間にすべて執行されることになる予定である。平成28年度は、これまで未着手の部分を優先的に進める予定であるので、助成金は計画に従い執行される予定である。
|
Research Products
(4 results)