2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒト免疫不全ウイルスがウイルスRNAの核外輸送経路を取捨選択する意義
Project/Area Number |
25460564
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷口 一郎 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (00467432)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ヒト免疫不全ウイルス / RNA核外輸送 / RNAスプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の感染後期に発現するウイルスRNAの遺伝子発現過程に注目している。 HIV-1のRNAは一般的な細胞のmRNAとは異なる仕組みで核外輸送される。一般的なmRNAはTAP-p15と呼ばれるヘテロ二量体で核外輸送されるが、ウイルスRNAは異なる因子であるCRM1と呼ばれる因子によって核外輸送される。なぜHIV-1は自身のRNAの核外輸送において、TAP-p15ではなくCRM1に依存した仕組みを利用するようになったのかを明らかにすることを目的とする。 TAP-15に依存した輸送機構を強制的にHIV-1 RNAに誘導するとRNAはどのようにふるまうのかを調べるために、HIV-1のRNAを発現するヒト培養細胞HEK293TでTAP-15を過剰発現させた。その結果、ウイルスRNAの量が特異的に減少した。これらのウイルスRNAにはイントロンが含まれていることから、TAP-p15がスプライシングを促進するのではないかと考えられた。 そこで、TAP-p15がスプライシング反応を促進するかを検証するため、培養細胞の系でスプライシング阻害実験を行ったが、明瞭な結果は得られなかった。これは、培養細胞では転写の影響を排除できないことが結果の解釈を複雑にしていると考えられた。 そこで次に、ヒト培養細胞の核抽出液を用いた試験管内スプライシング反応系を利用することにした。その結果、TAP-p15を過剰発現させた細胞から調製した細胞抽出液ではスプライシングが促進された。一方、TAPのRNA結合を阻害する阻害剤存在下では、スプライシングが阻害された。これらの結果は、TAP-p15にはスプライシング反応を促進するという新しい活性があることを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HIV-1の核外輸送におけるTAP-p15の影響を調べる手法として、ウイルスの遺伝子発現を再現できるヒト培養細胞を用いた実験系を利用することを当初予定していたが、明瞭な結果が得られなかった。しかし、試験管内の反応系を利用することにより、TAP-p15にはRNAスプライシング反応を促進するという新しい活性があることを支持する結果が得られた。このように実験系を変更することにより、ウイルスの遺伝子発現過程に及ぼすTAP-p15の影響に関する分子機構に迫る知見が得られつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
TAP-p15を過剰発現させた培養細胞の抽出液では、対照抽出液に比べてRNAスプライシング反応が促進した。また、TAP-p15阻害剤によりスプライシング反応が阻害された。これらの結果は、TAP-p15がRNAスプライシングを促進することを示唆しているが、間接的な実験によって得られたものである。これを直接的に示すために、今後は大腸菌で発現させ精製したレコンビナントタンパク質を用いてスプライシング反応が促進されるかを検証する。ただし、TAPのレコンビナントタンパク質は可溶化しにくいという問題が知られているので、十分な濃度のタンパク質が得られず、スプライシング反応の促進が見られない可能性がある。その場合、TAPの様々な欠失変異体を作製し、可溶化を目指すとともに、スプライシング促進に十分なドメインを探索する。
|
Research Products
(6 results)