2015 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト免疫不全ウイルスがウイルスRNAの核外輸送経路を取捨選択する意義
Project/Area Number |
25460564
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷口 一郎 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (00467432)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヒト免疫不全ウイルス / RNA核外輸送 / RNAスプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の感染後期に発現するRNAはイントロンを含んだまま核外輸送されるが、これは一般的な宿主mRNAとは異なる仕組みで核外へ輸送される。つまり、一般的なmRNAの核外輸送においては、TAP-p15ヘテロ二量体がmRNA上へリクルートされる。一方、HIV-1のRNAの場合では、ウイルタンパク質であるRevを介した、別の核外輸送因子のCRM1依存の仕組みを利用する。その際HIV-1は、積極的にTAP-p15依存の仕組みの利用を遮断している。つまり、HIV-1は自身のRNA核外輸送において、わざわざ宿主型の仕組みの利用を回避しているのである。それでは、なぜHIV-1はTAP-p15依存の仕組みを遮断しているのだろう。 上記の疑問に答えるために、HIV-1のRNAの発現する培養細胞にTAP-p15を過剰発現させて、強制的にTAP-p15依存の仕組みをウイルスRNAに誘導させた。その結果、感染後期に発現するウイルスRNAの量が減少することを見出した。また、試験管内スプライシング反応系において、TAP阻害剤によってスプライシング反応が阻害された。さらに、TAPを過剰発現させた培養細胞の破砕液を反応系に添加すると、スプライシング反応が促進された。以上の結果は、TAPがスプライシング反応を促進する活性を持つことを示唆している。 2015年度では、以上の「TAPのスプライシング反応促進活性」の可能性を直接的に検証した。まず、TAPの結合配列をmRNA前駆体に付加すると、スプライシング反応が促進した。また、大腸菌で発現させ、精製したTAPの組み換えタンパク質を反応系に添加すると、スプライシング反応が促進した。これらの結果は、TAPは実際にスプライシング反応を促進する活性を持つことを示している。このことは、遺伝子発現の下流の過程に関わる因子が、上流の過程に影響を及ぼすという興味深いコンセプトを提示できるものである。
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Research Products
(3 results)