2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25460569
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
入江 崇 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 准教授 (70419498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂口 剛正 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 教授 (70196070)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自然免疫 / インターフェロン / RNAウイルス |
Research Abstract |
自然免疫は、感染初期に発動する極めて重要な生体防御機構であり、微生物固有の因子を認識し発動する。この認識には、RNAウイルス感染ではウイルス由来のRNA分子がリガンドとして機能すると考えられているが、実際のウイルス感染ではそれが具体的にどのようなウイルス由来RNA分子なのか、ということはほとんど明らかにされていない。 本研究では、強い自然免疫抑制能を持つセンダイウイルス(SeV; Z株)を基本とし、IFN-β誘導性の高いC蛋白質変異組換えウイルスやSeVカンテル株との比較から、自然免疫系に認識されるウイルスRNA分子の実態を解明することを目的として研究を行っており、その過程に於いて、これまでに主に以下の成果を得た。 1. SeVの増殖に必須ではなく「アクセサリー蛋白質」と呼ばれるC蛋白質が、特にウイルスゲノムRNAの極性制御において決定的な役割を果たしており、(-)鎖RNAウイルスが「(+)鎖」ではなく「(-)鎖」RNAゲノムをもったウイルスとなるための仕組みを明らかにした(入江ら, Journal of Virology 2014)。 2. また、上記の様な様々なSeVの比較から、SeV感染では、IFN-β誘導性の少なくとも3種類のウイルス由来RNA分子が産生されること、これらの産生が非自然免疫誘導性のSeVでは抑制されていること、宿主によるこれらの認識機構が異なっていることなどを見出した(入江ら, 論文投稿中)。 3. さらに、上記のIFN-β誘導性のウイルス由来RNAのうちcopyback型DIゲノムは、カンテル株SeV感染で顕著に産生されるが、その産生にN蛋白質上の変異が重要な役割を果たしていることを明らかにした(入江ら, 論文準備中)。 4. C蛋白質の1分子種であるY蛋白質が、核移行性を持ち、これがIFN応答抑制に関係していることを明らかにした(入江ら, PLoS ONE 2013)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で初年度の目的としていた、IFN誘導性の高いウイルスRNA分子種の同定については、いくつかの性質の異なるRNA分子種の存在を明らかにすることが出来たが、この研究から派生して、(-)鎖RNAウイルスが「(+)鎖」ではなく「(-)鎖」ゲノムを持ったウイルスとなるための重要なメカニズムを明らかにすることに成功した(入江ら, Journal of Virology 2014)。 また、上記のRNA分子種の存在の解明にとどまらず、RNA分子種によって自然免疫による認識の仕組みが異なることや、これらIFN-β誘導性の高いRNA分子種の産生が通常は抑制されていること(入江ら, 論文投稿中)、これらのRNA分子種の産生はC蛋白質やN蛋白質の変異によるウイルスRNA合成の異常が原因となっていることを明らかにすることができ(入江ら, 論文準備中)、自然免疫によるRNAウイルス認識における新しい知見を生み出すことに成功しただけでなく、ウイルスの自然免疫回避についても新しい概念をもたらすことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の成果を元に、以下の点を中心に明らかにしていきたい。 1. C蛋白質によるウイルスRNA合成の極性制御について、その詳細な制御メカニズム。 2. IFN-β誘導性のウイルス由来RNA分子種について、その詳細の同定と、自然免疫系による認識メカニズムの違いについて。 3. ウイルスRNA合成制御におけるC蛋白質及びN蛋白質の役割と、その異常によるIFN-β誘導性RNA分子種の産生メカニズムについて。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度では、予定額を支出せず、次年度への繰越が生じたが、予定以上の成果を上げることが出来、特に年度末は成果の論文取りまとめに注力した。また、この論文の英文校正や、掲載決定時の掲載料などの支出に予定される額が概ね次年度に繰り越された。 「理由」で示したとおり、前年度の成果を取りまとめた現在投稿中及び準備中の論文の英文校正や、掲載決定時の掲載に掛かる経費として主に使用する予定である。
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Research Products
(13 results)