2013 Fiscal Year Research-status Report
創薬開発に向けたウイルススーパーファミリー1ヘリカーゼの構造と機能に関する研究
Project/Area Number |
25460576
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
加藤 悦子 独立行政法人農業生物資源研究所, 生体分子研究ユニット, 上級研究員 (00355752)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ウイルス / ヘリカーゼ / タンパク質構造 |
Research Abstract |
スーパーファミリ1(SF1)ヘリカーゼは、多くの農学上および獣医学上重要なウイルスにコードされている。しかし、その立体構造や原子レベルでの機能は不明な点が多い。近年、我々はトマトモザイクウイルス(ToMV)がコードするSF1ヘリカーゼの安定領域(ToMV-Hel)を決定し、その立体構造の決定に成功した。同様に、他のウイルスがコードするSF1ヘリカーゼの構造と機能が解明できれば、その共通性や相違点から、ウイルスSF1ヘリカーゼの機能を明らかにすることが可能となる。そして、この成果は将来的に創薬開発に対しての基盤上となることが期待できる。H26年度は、ToMVと同様にSF1ヘリカーゼをコードする4種類ウイルス(ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、風疹ウイルス、各種ウイルス)について、ToMV-Helとの比較やアミノ酸シーケンスから予測される二次構造を解析し発現領域を特定した。それぞれの発現領域に対して、可溶性の向上および精製の効率化のため各種タグを付与した発現ベクターを構築した。ヘリカーゼ領域を含むVEEV nsP2タンパク質は、ヒスチジンタグを付加して発現し、精製方法を確立した。また、得られたVEEV nsP2タンパク質は、等温滴定型カロリメトリーを用いた実験の結果、高いNTPase活性を有することが明らかになった。この結果は精製されたVEEV nsP2タンパク質が活性構造を形成していることを示している。さらに動的光散乱実験の結果、VEEV nsP2タンパク質はATPアナログ存在下で安定化することが分かった。現在、安定化条件における結晶化を検討中である。HEVに関しては発現を確認し、可溶化条件を検討中である。風疹ウイルスおよび各種コロナウイルスについては発現系の構築を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画当初は、ToMV-Helとアミノ酸相同性が比較的低い植物ウイルスであるTurnip yellow mosaic virus、動物ウイルスであるSARS-CoV、風疹ウイルスなどのヘリカーゼドメインの発現系の構築および精製条件の検討を予定していた。実際に研究を進めるにあたり、より現実的に問題となっているウイルスに変更することを検討し、以下に示すウイルス、VEEV、HEV、風疹ウイルス、各種コロナウイルス、について発現系を構築することとした。これらのウイルスのうち風疹ウイルス以外はワクチンが無く、薬剤の開発が期待されている。風疹ウイルスに関しては、ワクチンは既に実用化されているが、妊婦や新生児には投与できないために、やはり薬剤の開発が期待されている。それぞれのヘリカーゼドメインの構造が決定できれば、その構造を基盤とした薬剤開発が可能となる。特にH25年度は、現在感染が問題になっているMERSコロナウイルス等の発現ベクターの構築に着手できた。またVEEV nsP2タンパク質については、予定よりも早く精製条件を確立でき、すでに結晶化のスクリーニングを開始した。予定よりも早く実験が進んでいるが、現時点で構造解析可能な結晶は得られていない。 一方、タンパク質発現系の構築および発現条件・精製条件の検討を優先させてしまったために、モデリング構造の構築については、予定を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度に予定していたToMV-Helとアミノ酸相同性の高いウイルス(同じVirgaviridaeに属するウイルスや属が異なるBrome mosaic virus, Beet Yellow virusなど)についてのモデリング構造の構築を行う。得られたモデリング構造とToMV-Helの比較を行い、機能発現機構について検討する。具体的には、既にToMV-Helの解析結果から明らかになった、または予想される領域(NTP結合領域、RNA結合領域、宿主認識領域)に位置する残基の比較や表面特性について詳細に検討する。 またToMVと同様にSF1ヘリカーゼをコードするウイルスについては、4種類の発現クローンの構築が順調に進んでおり、今年度の研究を継続して進める予定である。具体的にはVEEV nsP2タンパク質の結晶化条件の検討、HEV、各種コロナウイルスおよび風疹ウイルスのヘリカーゼドメインの発現条件および精製条件の検討を進める。しかしこの過程で、発現構築したドメインが最適な構造ドメインでないために、目的タンパク質が精製できない場合も想定される。その場合にはN末やC末の領域を再検討するなど発現領域の見直しを行うことや、他の類縁ウイルスについて改めて発現系を構築することなどを早急に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画では、ToMV-Helとアミノ酸相同性が比較的低い植物ウイルスのヘリカーゼドメインについて、遺伝子合成を行い、それを基に発現系を構築する予定であった。しかし、共同研究者から遺伝子の供与があったため、その予算を使用する必要がなくなった。しかし、その分、発現実験や精製実験が進み、そのための試薬を購入と非常勤職員を雇用することとなり、最終的には差額が生じた。 遺伝子を供与していただいたため、研究の予定が早まっており、そのため多くの発現実験や精製実験を行う予定がある。差額は、それらの実験を行うために必要な試薬の購入をする予定である。
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[Book] Peptide Science 20132014
Author(s)
Etsuko Katoh, Kazuhiro Ishibashi, Chihoko Kobayashi, Hiroyoshi Matsumura, Masayuki Ishikawa
Total Pages
31-32
Publisher
The Japanease Peptide Society