2014 Fiscal Year Research-status Report
共刺激分子による抗腫瘍免疫反応の機能解析とがんワクチンへの応用
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25460587
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
辛 太廣 信州大学, 医学部, 非常勤講師 (70637199)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究の目的は、共刺激分子であるB7-DCのもつ抗腫瘍効果の機能と作用機序を解析し、新しいがんの免疫療法を模索するための基礎的な情報を収集する事である。 1年目、平成25年度、methylcholanthrene(MCA)を使用して自発がんを誘導し、B7-DCの機能的役割をB7-DCのノックアウト(KO)マウスを使い明らかにした。 MCAによるSarcomaの誘発をしたところ、B7-DCKOマウスでは、野生型(WT)マウスよりも発癌の頻度は高く、発育も早かった。抗B7-DC特異的抗体の投与は、B7-DCKOマウスと同じ様な効果をもたらした。B7-DCKOマウスに発生したSarcomaはWTマウスに移植したものよりもやや免疫原性が高く、WTマウスに移植した場合増殖の遅延が認められたが、免疫不全マウスに発生したSarcomaほどではなかった。B7-DCを発現する細胞群を純化してB7-DC KOマウスに移入する実験は、予想よりも多くの細胞が必要であり、今のところ安定したデータを得られていない。 2年目、平成26年度、マウス大腸がん細胞株、マウス悪性黒色腫細胞株の担がんマウスを作成し、B7-DCを発現した細胞を移入しがんを退縮させるシステムを使い、抗CD4抗体でCD4T細胞のいない状態でB7-DC発現細胞によるCTLの誘導を観察した。CD4T細胞がいないと、CTLの誘導はやや良い事がわかった。in vitroで誘導したTh1、Th2、Th17、Tregを移入して同じ実験を行ったところ、Th1、Th17はCTLの誘導を大きく増加させ、TregはCTLの誘導を大きく減らす事がわかった。各CTLにおける遺伝子発現パターンを、マイクロアレーを利用して検討しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
このプロジェクトでは、1、がんの免疫校正におけるB7-DCの役割の解析。2、B7-DCが誘導する抗腫瘍効果におけるCD4ヘルパーT細胞の役割の解析。3、B7-DCを利用したワクチンの開発のための基礎実験、の各課題に取り組む事になっている。1年目、平成25年度の研究の進度は、実験環境の整備もあったために遅れていたと思われるが、2年目、平成26年度は、平成25年度の反省もあり、1と2の課題で計画されていたほとんどの部分の実験が行われ、多くは予想通りのデータを得る事が出来た。計画されていた課題の中には、テクニカルに、または時間的に解決困難であったものもあり、これらは3年目、平成27年度中に解決できるように努力する予定である。また、平成27年度は、3の課題のデータを得られるように努力する予定であるが、平成26年度のペースで実験を進めていけば、もともと計画に無理があったとは思えないので、計画通りに行くはずであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
このプロジェクトでは、以下の3つの課題の解決を目指すことになっている。1、がんの免疫校正におけるB7-DCの役割の解析。2、B7-DCが誘導する抗腫瘍効果におけるCD4ヘルパーT細胞の役割の解析。3、B7-DCを利用したワクチンの開発のための基礎実験。 1年目、2年目では、1と2の課題のほとんどの部分のデータを得る事が出来た。3年目では3の課題のデータを得られるように努力する予定である。また、1と2の課題の中でテクニカルに、または時間的に解決困難であった項目についても、再実験、解析を進める事で当初の計画に追いつきたいと考えている。 計画されている本年度の実験は、抗PD-1抗体や抗B7-H1抗体療法とのコンビネーションの候補として、B7-DCワクチンの可能性を探る事である。実験モデルとして、MCAによる発癌の系とB16メラノーマによる移植がんの系を予定している。いずれの場合も抗PD-1抗体や抗B7-H1抗体とB7-DCワクチンの投与を開始するタイミングは、腫瘍が肉眼で観察されるようになってからという、治療するには大変厳しい条件下で行う。提案するワクチンの候補としては、B7-DC+B細胞を予定している。ワクチンの比較対象としては、樹状細胞、GM-CSF産生癌細胞株ワクチン(GVAX)を予定している。
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Causes of Carryover |
最初に、1と2の課題でテクニカルな問題の解決に、金銭的よりも時間的に手間がかかった。マウスを実験に使用しているが、マウスの繁殖が2年目の後半になってようやく追いついたため、飼育費、餌代、実験に使う消耗品などの諸経費の支払いが次年度にずれ込んでしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1、2、3、の全ての課題について、計画された実験を行う予定であるため、3年目、平成27年度中に飼育費、餌代、実験に使う消耗品として全て使用する予定である。マウスの繁殖も予定の軌道に乗っているため、実験の進行に今後は支障が出ないはずである。
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