2014 Fiscal Year Research-status Report
ANGPTLによる免疫グロブリン様受容体を介した免疫制御機構の解析
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25460595
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
海川 正人 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00325838)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アンギオポエチン様蛋白質 / 抑制性免疫グロブリン様受容体 / 免疫担当細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では Angptl2 が抑制性免疫グロブリン様受容体を介して、免疫担当細胞にどのような作用を与えるか解析し、その分子メカニズムを明らかにする事を目的としている。 初年度には、活性を持った Angptl2 を安定して産生する培養細胞株を樹立し、培養液中に分泌される修飾型の Angptl2-Flag 蛋白質を安定して供給する系を確立した。次いで、免疫学的実験に良く用いられる骨髄由来マクロファージや RAW マクロファージ様細胞、B 細胞、T 細胞由来の細胞など PirB を発現している細胞を中心に Angptl2 に対する反応を解析したが、明らかな反応を見出す事はできなかった。 しかし、今年度、マウス生体由来の免疫細胞を用いて Angptl2 の作用を検討する過程で、 特定の免疫担当細胞群が生理的な濃度の Angptl2 で活性化され、形態的に変化する事を見出した。この免疫担当細胞群は培地中に IL-6、IL-1、TNFα といった炎症性サイトカインを LPS で刺激した場合と同じレベルで産生しており、炎症性サイトカインの遺伝子発現のレベルは Angptl2 処理 3 時間で顕著に増加していることから、Angptl2 直接の作用であると考えられた。これまで Angptl2 の刺激により免疫担当細胞に蛋白質レベルで IL-6、TNFα といったサイトカインの産生が起こる事を示した報告はなく、 Angptl2 の新たな生理的な作用の一つである。更に、Angptl2 がどのような細胞内シグナルを介してサイトカインの産生を誘導するか検討したところ、LPS 刺激と同様に、3つの主要な MAP キナーゼ ( ERK、JNK、p38 ) の活性化と NFκB の核移行が認められ、それらの免疫反応応答経路を介していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、大量調製した Angptl2 蛋白質を用いて、予定通り様々な細胞の反応について検証を行った。その過程で、マウスの免疫担当細胞で、修飾型の Angptl2 に特異的に反応を示す特殊な細胞群の存在が明らかになり、それら細胞群の性質を詳しく検証する事ができたことから、当該研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Angptl2 刺激により、炎症性遺伝子の発現が誘導されることから、Angptl2 がどのような経路で、この転写因子を活性化するか、また、その下流でどのような遺伝子の発現が調節されているか明らかにする。 Angptl2 処理した Angptl2 反応性細胞の細胞内蛋白質を経時的に回収し Angptl2 刺激後に細胞のリン酸化蛋白質を分離し、ディファレンシャル2次元電気泳動によって細胞内の蛋白質のリン酸化状態に変化の見られるシグナル蛋白質を同定する。また、Angptl2 処理した細胞の mRNA を回収し、マイクロアレイ法により、Angptl2 処理により発現変化の見られる遺伝子を探索する。LPS 刺激により変化の見られる遺伝子群との比較から Angptl2 の関与するシグナル系の同定を試みる。 また、Angptl2 反応性免疫担当細胞と、NFκB の核移行が確認できた M-CSF 刺激により分化させた骨髄由来マクロファージ様細胞、NFκB の核移行が見られなかった GM-CSF 刺激により分化させた骨髄由来マクロファージ様細胞の発現遺伝子の差異を解析する事で、Angptl2の受容体候補分子を選択する。選択した受容体候補蛋白質の発現を分子遺伝学的手法を用いて増減させ、Angptl2 の反応性が変化するかを指標に受容体の同定を行う。次いで、受容体候補の免疫沈降実験を行い、Angptl2 処理により、会合する蛋白質の増減や受容体自身のリン酸化状態を解析し、Angptl2 シグナルに関与しているか明らかにする。 以上の解析を行う事で、受容体から遺伝子発現制御に至る一連の Angptl2 シグナル系を明らかにして行く予定である。
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Causes of Carryover |
26 年度にマイクロアレイ解析を複数サンプル解析依頼する予定であったが、所属大学にマイクロアレイ解析装置が導入される事になったため、予定より安価に解析を行えた。また、26 年度に Angptl2 に反応する新たな細胞群を同定する事ができたため、それらの細胞を用いた受容体の同定解析を 27 年度に行うよう計画を変更し、解析にかかる予算を次年度に持ち越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
26 年度に明らかとなった新たな Angptl2 反応性免疫細胞と Angptl2 への反応性が異なる事が明らかとなった GM-CSF 骨髄由来マクロファージ様細胞と M-CSF骨髄由来マクロファージ様細胞の発現遺伝子の差異をマイクロアレイ解析装置を用いて網羅的解析を行い、受容体候補を探索するために使用する計画である。
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