2014 Fiscal Year Research-status Report
認識分子フィコリンの恒常性維持に果たす新たな役割と分子基盤の解明
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25460596
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
遠藤 雄一 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (20117427)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フィコリン (Ficolin) / 自然免疫 / 恒常性維持 / レクチン / レクチン経路 / フィコリン欠損マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
フィブリノーゲン様ドメインにレクチン活性をもつタンパク質であるフィコリン (ficolin) は、感染防御等の自然免疫に働くと考えられている。本研究は、外来微生物に対する防御機能に加え、フィコリンが内在分子を標的として生体の恒常性維持に働くことを明らかにするものである。前年度までの解析で、三系統のフィコリン欠損マウス胎児のうちフィコリンB欠損マウスの骨周辺に微細な形態的異常を見いだした。本年度は、胎児の形態異常の解析を継続するとともに、その原因を明らかにするために、フィコリンが働く作用経路の推定およびマウス胎児および成体マウスの組織を材料とした標的分子の単離を中心に解析を進めた。その結果、マウス胎児をはじめ成体マウスの組織の細胞膜にフィコリンが認識する分子が存在することが分かった。現時点で1つの受容体分子を同定しており、その反応機序を解析中である。この働きは、フィコリン単独またはセリンプロテアーゼMASP1/3との複合体の形で発揮されると推定された。一方、マウス胎児のDNAマイクロアレイ解析およびパスウェイ解析からは、フィコリンが細胞の移動・ホーミングあるいは造血系細胞の活性化・分化や移動に関与する可能性が示唆された。実際に、生体マウス細胞を用いた解析から、とくにフィコリンBが、単球、樹状細胞、T細胞、B細胞の特定の集団を認識することが明らかになった。この結果は、種々の培養細胞を用いた解析からも確認された。以上の結果は、フィコリンが胎児期の形態形成に関与している可能性を示唆するとともに、成体期においては、造血系細胞の機能に深く関与していることを示している。さらに、フィコリンが、自然免疫のみならず、獲得免疫にも関与する可能性を示唆している。また、一連の解析の中で、フィコリンA(ヒトフィコリン2の類似分子)とフィコリンB(ヒトフィコリン1の相同分子)の役割の違いも鮮明になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、フィコリン欠損マウスの表現型に大きな異常が検出されない中で、種々の状況的証拠をもとに「フィコリンは生体の恒常性維持に働く」という作業仮説を立ててスタートした。当初は、多くの可能性が考えられ手探りの状態であったが、網羅的解析を進める中で、胎児における形態形成と成体における造血系細胞の制御という二点に焦点を絞ることができた。後者については、天然の細胞に加えて培養細胞を用いることができ、解析系が単純化され解析も加速できた。また、標的分子の同定は、アフィニティクロマトグラフィと質量分析の条件設定が整い、信頼性のある結果が得られるようになった。その結果、当初の作業仮説が実際に証明できる段階に到達した。本研究において、フィコリンが比較的初期の胎児の段階で組織の恒常性維持に働いていることを示すことの意義は大きい。また、これまで自然免疫の分子と考えられてきたフィコリンが、獲得免疫においても重要な役割を担うことを示す意義は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
フィコリン欠損マウスの表現型については、胎児期の形態形成異常とその発生機序の分子基盤を明らかにするために、これまでの解析を継続して、胎児細胞の細胞膜に存在する標的分子の特定を進める。これまでに同定されている受容体分子の他にも標的分子が存在する可能性があり、アフィニティクロマトグラフィと質量分析による分子の同定を継続する。同定された分子については、生化学的手法による確認実験を進め、フィコリン作用の分子基盤と生物学的意義を明らかにする。同様に、フィコリンによる造血系細胞の制御については、アフィニティクロマトグラフィと質量分析により、ヒトまたはマウス由来の培養細胞の細胞膜から標的分子を同定する作業を継続する。同定された分子については生化学的手法によりフィコリンの作用機序と生物学的役割を明らかにする。フィコリンの生体の恒常性維持において果たす役割については、フィコリン欠損マウスに戻り改めて表現型異常の有無を調べる。本年度は本研究の最終年度であり、結果の公表にも力を入れる。
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Research Products
(3 results)