2013 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティック制御因子EedによるT細胞機能制御機構の解明
Project/Area Number |
25460599
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
内藤 拓 東邦大学, 医学部, 講師 (10568728)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | T細胞分化 / エピジェネティクス / TCRシグナル伝達 |
Research Abstract |
Eed欠損マウスではDPからSPステージへの分化障害が見られるが、OT-IおよびOT-IIトランスジーンにより分化障害がレスキューされるか調べた。OT-Iでは分化障害がレスキューされるのに対してOT-IIではレスキューされなかった。トランスジーン非存在下でEed欠損マウスでは胸腺において通常の正の選択を受けたαβT細胞と比較してIELの前駆細胞やTregの割合が有意に減少していたことから、Eed欠損によりアゴニスト選択がより強い障害を受けることが明らかとなった。Eed欠損マウスではCD8αα IELの減少が見られるが、それに関しては上述のように胸腺におけるアゴニスト選択の障害が原因の一つであることが強く示唆された。 成熟T細胞におけるTCRシグナル伝達についても、CFSE標識した末梢のナイーブT細胞を用いて検討した。単離したナイーブCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞を抗CD3/CD28抗体で刺激した場合、Eed欠損細胞では野生型と比較して増殖するものの割合が少なかったが、PMA/イオノマイシン刺激では逆に増殖の亢進が見られた。このことはEed欠損T細胞ではTCR近傍でのシグナル伝達に何らかの障害があることが示唆された。またPMA/イオノマイシン刺激したものでも、長時間の培養後はEed欠損T細胞の生存率は野生型と比較して低下していた。したがってEedはT細胞の生存維持にも関与していることが示唆された。 またEed欠損ヘルパーT細胞のThサブセットへの分化能及びサイトカイン産生能についても検討した。Th1、Th2条件下ともIFNγ産生が野生型と比較して亢進していた。Th2条件下でのIL-4産生は低下した。Tregへの分化はほぼ正常であったが、Th17への分化は細胞が増殖せず結論が得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ研究は概ね順調に進んできている。一連の解析からEedがTCRシグナル伝達を制御していること、とりわけ強いTCRシグナルの受容、または解釈に関与すること、その結果としてCD8αα IELやnTregの分化がより強く影響を受けることを示唆するデータを得た。またThサブセットへの分化能の基礎的な検討も行い、INFγを強く産生することを見いだした。またEedの局在を細胞質に限局するための遺伝子改変マウスの作成も行われ、現在交配と解析が進行中である。この遺伝子改変マウスが予想通りにはたらくことが確認されれば、H3K27メチル化の役割だけを切り離して解析できると期待される。これらは研究計画通りである。 Eed欠損T細胞の分化能やホーミング能をRag欠損マウスへの養子移植により検討する実験については、Rag欠損マウスの繁殖が予想を下回ったため条件検討の段階で留まっている。これについてはRag欠損マウスのコロニーを拡張することにより対応してゆく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまずEed欠損T細胞で見られたTCRシグナル伝達異常について、下流シグナル伝達分子のリン酸化状態、TCR刺激後のCa2+流入、そしてアクチン重合動態を、ウェスタンブロットやフローサイトメトリーを用いて検討していく。またT細胞活性後に見られる細胞生存率の低下についても、TCR刺激後経時的に細胞生存率をモニターすると共に、T細胞の活性化誘導的細胞死に関与することが知られている分子の発現の変化を野生型細胞と比較して調べてゆく。これらによりEedのT細胞免疫応答における基礎的なデータを得る予定である。 また細胞の自己同一性維持におけるEedの役割についても検討するため、Th1やTh2へとin vitroで分化させた細胞をさらに他のThサブセットへと誘導する条件下に移したときに、サイトカイン産生パターンや転写因子の発現の安定性が影響を受けるかについても検討する。さらに各Thサブセットの分化に重要な役割を果たすキー転写因子をEed欠損T細胞に強制発現させることで、細胞の自己同一性を操作できる可能性についても基礎的な検討を開始する。 またEed欠損マウスにおけるCD8αα IELの減少が見られるが、胸腺内でのアゴニスト選択を受けたIEL前駆細胞の機能についても検討する。具体的には単離した前駆細胞をIL-15存在下でin vitroで培養する、あるいは養子移植することでIELへの終末分化能を検討する。またIELのホーミング能についても養子移植により検討する。 さらに核質特異的Eed欠損マウスの基本的な性状について検討を行う。まず各細胞分画を調製し、ウェスタンブロットによりEedが細胞質にのみ存在するか確認する。また単純Eed欠損マウスで見られた幾つかの表現型について、核質特異的Eed欠損マウスでも見られるかチェックする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
外部発注した遺伝子発現マイクロアレイ解析が、当該年度中に終了しなかったため。 上記解析は終了したので、使用される予定である。
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[Journal Article] Transcriptional regulation of the Ikzf1 locus.2013
Author(s)
Yoshida T, Landhuis E, Dose M, Hazan I, Zhang J, Naito T, Jackson AF, Wu J, Perotti EA, Kaufmann C, Gounari F, Morgan BA, Georgopoulos K.
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Journal Title
Blood
Volume: 122
Pages: 3149-3159
DOI
Peer Reviewed
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