2013 Fiscal Year Research-status Report
生活習慣病の遺伝要因に関する知識が患者の行動変容と治療成績に及ぼす影響の研究
Project/Area Number |
25460615
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
櫻井 晃洋 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70262706)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福嶋 義光 信州大学, 医学部, 教授 (70273084)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生活習慣病 / 遺伝要因 / 環境要因 / 遺伝教育 |
Research Abstract |
本研究は,遺伝に関する正確な知識を有することが,生活習慣病に関連する健康志向行動や受療行動にどのような影響を与えうるかを検証し,日本の現状に即した市民教育の方略を確立するための介入研究であり,生活習慣病患者を対象に遺伝要因,特に家族歴に対する認識を調査し,次いで遺伝に関する認識を高めるための介入を行なった群と行なわない群で一定期間後にその効果と患者の認識を評価する予定である.こうした啓発活動を効果的に実践するには看護師や保健師の関与が重要となるが,看護職者は遺伝学を系統的に学ぶ機会がなく,現在はまだ遺伝医療にチームの一員として参画する準備が十分とは言えない状況にある.そこで初年度は,まず患者に対する調査の方法や項目を検討する目的と,医療職者における遺伝に関する意識を確認する目的を兼ねて,信州大学医学部附属病院と札幌医科大学附属病院の看護職者を対象としたアンケート調査を実施し,約800名からの回答を得た.その解析により,医療関係者においてもまだ遺伝に関する意識や認識は十分とは言えず,患者に対する遺伝リテラシー教育を効率的に進めるためには,同時に医療関係者に対する教育も並行して進める必要があることが明らかになった.また,アンケート内の自由記載から,一般市民を対象としたこうした調査を実施するにあたって考慮すべき多くの提案を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者が異動となり,主に研究を実施する予定である信州大学との連絡に若干のエフォートを割かれることにはなったが,適宜研究打ち合わせや頻繁なメール等による確認を行うことにより,おおむね順調に研究を遂行できている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は,実際に患者に対する介入研究を行う予定である.このため,年度の前半に啓発用教材の最終版を完成させる.エントリーの承諾が得られた患者に対し,罹患している生活習慣病の家族歴,遺伝と健康の関係や,家族歴や生活環境が自身の健康状態にどう影響すると考えているか,さらには一般的な遺伝に関する知識や意識について自記式のアンケート調査を行なう. 上記の患者をランダムに2群に分け,一方の群は認定遺伝カウンセラーによる遺伝と健康,遺伝要因と生活習慣病に関するシリーズの講義を受ける.この講義は,糖尿病教室など病院で定期的に開催している患者講座の際に追加の講義として実施する部分と,個々の患者の家族歴をもとに罹患リスクについての情報を個別に提供する部分からなる.さらに受講群に対しては,定期的にアクセス制限を加えたインターネットもしくは印刷物により情報提供を行う.講義内容や提供される情報の内容の理解度も随時調査する. 初回の講義後24週間の観察期間ののちに,受講群と非受講群の双方を対象に自記式アンケート調査票を用いて,生活習慣の変化や受療行動にかかわる意識の変化,遺伝要因と健康に関する認識などを調査し,さらに治療成績についても個々の患者の診療記録を調査して,両群の結果を比較する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年3月に本研究費により学会出張(米国)を行っているが,この経費が平成26年度に処理されるため,実際の平成25年度支出額はおおよそ105万円となっており,実際の次年度使用額(B-A)は38万円程度である.研究代表者が平成25年4月に異動となったため,実際の介入研究を開始するための資料作成や実施計画の具体的な打ち合わせに予定より若干の遅れを生じ,このため平成25年度に計上する予定であった印刷費用などが平成26年度以降に持越しとなった.準備はおおむね順調に進んでおり,来年度に予定通り研究を遂行できる見込みである. 平成26年度には「その他」経費によって介入研究に使用する資料や調査票などの印刷を行う.またデータの解析に臨時のアルバイトを雇用するための謝金が必要となる.研究代表者が研究実施場所(信州大学)に行くため,当初の研究計画よりも旅費の支出が多くなることを見込んでいるが,その分はその他経費の圧縮によって対応する.
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