2014 Fiscal Year Research-status Report
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25460619
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
瓜生原 葉子 同志社大学, 商学部, 准教授 (70611507)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会価値 / 移植医療 / 行動変容 / 意思決定 / 実証研究 / ソーシャルマーケティング / 利他行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
一連の研究の最終目標は,深刻な社会問題である臓器提供不足の解決に資するエビデンスを構築し,臓器提供の増加と質の向上を目指した社会基盤を確立することである。本研究では,移植医療の社会価値,および人々が臓器提供について考え意思表示を行うメカニズムについて明確化し,臓器提供に関する意思決定が円滑に行える社会のしくみを学術的・実践的に導出することを目的としている。 平成26年度は,一般10,000名を対象とした意思表示行動に関する定量調査,および,非医療系大学生を対象とした行動変容に関する実践のパイロット・テストを行った。 前者については,一般が意思表示を行うメカニズムを解明し,必要な介入を明らかにすることを目的とし,Procheskaの行動変容モデルと先行研究から導出した仮説の実証を行った。その結果,無関心層に関心を持たせる,意思決定者を行動に移行させる段階への介入の必要性が示された。それぞれ,家庭・学校における援助規範,利他行動の教育と移植に関する知識の提供,意思表示している人との交流と家族・知人との対話の機会が必要であることが示唆された。 後者に関しては,非医療系大学生を対象に臓器提供意思表示をテーマとした問題解決型授業を10週間実施し,意思表示に関する態度・行動変容効果について測定した。その結果,学習終了後に全員が関心を持ち,そのうち86%が意思決定し,57%が意思表示を行った。レポート内容の分析より,主体的に調べ,討議し,解決法を考えたことの有益さが示され,論理的な問題把握力,知識の統合力,強いコミットメントが行動変容に好影響を及ぼすことが示唆された。 以上について,国内学会で計3回発表したほか,昨年度の結果について国内外の雑誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目は,移植医療の社会価値情報の構築を目的とした。予定していた調査の一つである移植患者の社会生活の実態調査に関しては,研究者が非医療系大学に異動となり,実施困難な状況となった。しかし,一般10000名を対象としたて医療調査から,国民にとっての社会価値について導出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目は集大成としての行動変容効果の検証を行う。研究計画当初は,マスメディアによる介入を予定していたが,大学生を中心とした非営利組織を基盤に,臓器提供について「考え,意思決定をし,その価値ある意思決定を家族や友人に共有する」行動を促進するプロジェクトを展開し,効果測定を行う。その理由は,研究結果から,20代をターゲットとし,コミットメント(意思表示について家族・友人と話す,自ら関わる)の重要性が導出されたことである。 若者層を対象としたグループフォーカスインタビュ-,アンケートなどで実態調査を行い,その結果に基づいた介入,効果測定を行う。また,種々の一般との対話の場(サイエンスアゴラなど),SNSから発信するメッセージに対する解析も行う。これらを総合し,移植医療の社会価値の普及方法と人々の行動変容への影響度を総括する。
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Causes of Carryover |
2年目は,1年目の成果発表とそのfeedbackを目的とした海外旅費を多く計上していたが,健康上の理由で海外における学会発表,および調査が不可能となり,海外旅費を使用しなかったため,。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学生・市民との対話の機会,SNSによる発信による一般の行動変容を測定するため,主に,対話イベント(会場費,展示製作費,旅費など),発信媒体の充実(websiteの開設,コンテンツ作成費用)と一般を対象とした大規模な定量調査に使用する予定である。
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