2013 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス性肝炎での集団予防接種の寄与と輸入型B型肝炎ウイルスキャリアの将来予測
Project/Area Number |
25460631
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
古屋 博行 東海大学, 医学部, 准教授 (10276793)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ウイルス性肝炎 / 集団予防接種 / 数理モデル |
Research Abstract |
本邦での集団予防接種等によるB型肝炎感染キャリア推定に関する報告が、2013年秋に相次いであった。平成25年度の研究として、これらの研究報告のメタ分析と「集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会」の報告を中心とした文献調査に留まった。Okamotoによる報告では、数理モデルにより1951年から1955年の出生コホートの推定で出生時のHBVキャリア率0.65%から1995年におけるキャリア率が1.4%と増加、1981年から1985年の出生コホートでは、その後のキャリア率は出生時のキャリア率より減少していた。一方、Satoらは、1950年から1985年のコホートを対象とした数理モデルからHBVキャリア率を推定した。水平感染の寄与によるキャリア率は男性で1.43%から0.1%、女性で0.95%から0.03%であった。水平感染によるキャリア率の垂直感染キャリア率に対する比の変化を経時的に分析すると、Okamotoの研究では1950年から1960年にかけて急激な減少を示していたのに対し、Satoらでは1950年から1985年にかけて線形的に減少していた(男性)。 集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会の報告書から、昭和28年にWHOは血清肝炎が連続使用の皮下注射針又は注射筒によっても感染すること及び一斉予防接種に問題があることを警告。昭和34年1月「予防接種の実施方法について」で「接種液を吸入するには、そのつど滅菌した注射器を使用しなければならない」とした。推定結果との比較から昭和34年の通知による水平感染予防効果が大きいことが推測された。しかし、水平感染によるキャリア率比は、それ以降もなだらかな減少を認め、昭和63(1988)年1月の「予防接種等の接種器具の取扱いについて」までに、注射針、注射筒も取り換えの徹底が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画当初、本邦での集団予防接種等によるB型肝炎感染キャリアの推定に関する報告は見られなかった。平成25年度は「集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会」の調査結果の分析を行ったが、モデル作成に必要なパラメータ抽出に参考となる情報に欠けていた。さらに、当時の集団での注射器の連続使用による感染確率を、個体での感受性確率、予防接種への曝露確率、注射後の肝炎ウイルスの感染確率からmass action modelを使用して推定する予定だったが、2013年秋に本邦での集団予防接種等によるB型肝炎感染キャリアの推定に関する2つの論文報告が相次いで発表された。この研究結果を比較検討し、数理モデルの見直しを要した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究報告の結果から推定された当時の集団での注射器の連続使用状況をもとに、感受性のある者(S)、急性肝炎(A)、慢性肝炎(C)、回復(R)の4集団からなるコンパートメントを仮定した連立微分方程式によるモデルを作成する。国が予防接種を義務付けた1950年から、注射の使い回しを禁じた1988年までの期間を想定して、当時の集団予防接種(集団予防接種及び集団ツベルクリン反応検査)の接種率、注射針、注射筒の連続使用の頻度、注射筒の不適切な消毒頻度等の当時の実施状況からB型、C型肝炎ウイルスの感染者の推定を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画当初、本邦での集団予防接種等によるB型肝炎感染キャリアの推定に関する報告は見られなかった。しかし、2013年秋に数理モデルにより集団予防接種等によるB型肝炎感染キャリアの推定に関して相次いで2件の報告があり、そのためそれぞれの報告結果について比較検討と本研究テーマとの関連性について分析し、分析結果を数理モデルの作り直しが必要となったため、当初の計画に遅れが生じた。 感染症数理モデルのワークショップ、研究会の場で本研究の数理モデル手法について、他の専門家の意見を取り入れることでより正確度の高い推定を目指したい。
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Research Products
(2 results)