2014 Fiscal Year Research-status Report
医師は乳幼児にとって常に怖い存在か?「医者嫌い」のメカニズムの解明
Project/Area Number |
25460639
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
渡部 基信 同志社大学, 研究開発推進機構, 共同研究員 (30649306)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 乳幼児 / 医者嫌い / 人見知り / 行動調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
日常の小児科の診療において、しばしば乳児は医師の診察に対し、強い拒否反応を示し時には激しく泣いて嫌がる。今まで単なる「医者嫌い」として見過ごされてきたが、そこには乳幼児の情動や認知機能の発達等の要因が関係していると思われる。乳幼児の情動は医師の行動とともにどのように変化していくのか、明らかにしたい。今回我々は医師診察時の状況を再現し、医師に対する乳幼児の行動について実験的に検討した。 【方法】対象:健康な生後6ヶ月から24ヶ月の乳幼児。手続き:パーティションを使って簡易の診察室を作り,奥の壁側の椅子に母親が座り、その膝の上で乳児に座位を取らせた。実験は4つの場面で構成された。①白衣を着た実験者が母子の正面から部屋に入った(入室)。②次に母親に話しかけながら、診察出来る距離まで母子に近づき椅子に座った(着席)。③問診を取りながら白衣から聴診器を取り出し、乳児の胸部にあて聴診した(聴診)。④聴診をした後実験者はパーティションの横から部屋の外へ出た(退出)。解析方法:乳児の胸部に心電図のセンサーを取り付け実験中の心拍数を計測した。また実験中の乳児のビデオ撮影を行い、行動を分析した。 【結果】生後7ヶ月から20ヶ月の乳幼児65名(女児33名,男児33名)について調査を行った。うち55名について解析した。撮影したビデオから入室してきた医師を乳児はよく注視しており、注視中の脈拍は低下していた。心拍は医師入室後5秒後に有意に低下していた。乳児の行動やの脈拍の動きと、乳児行動調査票IBQ(Infant Behavior Questionnaire)との関連は総ポイントでは見出せなかった。むしろ家族構成や普段の医師に対する態度との関連が示唆された。 【考察】普段の医師との関わりの中で、「医師嫌い」が形成されてくるものと思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度からさらに対象者の数を増やし、65名の乳幼児の調査を終了した。また予定していたビデオの解析も終了した。乳児行動調査票IBQ(Infant Behavior Questionnaire)の解析も予定通り終了した。診察時の医師に対する恐れを取り除く方法については、現在調査を進めている。以上のように26年度中の研究を、ほぼ当初の計画通り進めることが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
26年度から進めている、診療中の医師に対する恐れを取り除く方法を確立する。 乳幼児を診察するときに、敢えて背中から聴診することにより、直接視線を合わせないようにする方法を研究中である。現在まだ調査中ではあるが、泣きそうな児が医師背を向けることにより、落ち着きを取り戻すことがたびたびみられている。この方法は簡単であり、研究により有効性がわかれば診察の大きな助けになると思われる。さらに調査を進める。
|
Causes of Carryover |
該当年度は主に研究データの解析を中心に行ったため、解析実験補助員の人件費が予定していたより少なく済んだ。また解析用のPCが、定価よりも安く購入できた。当初予定していた学会出張が出来なかったため旅費なども予定額より少なくなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
乳幼児の行動や表情を解析するために、ビデオカメラが複数必要であることがわかった。新たに購入し、詳細な調査を行う予定である。また研究データの解析のための実験補助員もさらに必要である。 最終年度は研究成果の発表のための学会出張、論文校正のための費用も予定している。
|
Research Products
(1 results)