2013 Fiscal Year Research-status Report
体外循環装置操作の臨床経験を定量化する新しい仮想患者シミュレーションモデルの開発
Project/Area Number |
25460642
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
二宮 伸治 広島国際大学, 保健医療学部, 教授 (60237774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒崎 達也 広島大学, 大学病院, 助教 (40448270)
戸梶 めぐみ 広島工業大学, その他部局等, 助教 (10709108)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 医学シミュレーション教育 / 体外循環技術 / 人工心肺シミュレータ / 透析教育シミュレータ / 仮想患者モデル / 医療安全 |
Research Abstract |
臨床経験者の主観的表現を患者シミュレータの血行動態・代謝動態モデルの定量的パラメータに反映させる仕組みの第一段階として、申請者らがこれまで開発した仮想患者シミュレーションモデルECCSIMの制御パラメータおよび症例を特徴づけるパラメータを統合的に管理、設定できる新しいソフトウェア(ECCSIM-X ver.0.1.2)を開発した。また同じ手法を急性透析技術教育にも応用するため、透析技術教育用シミュレータHDSim ver.2.4.2にも同様の機能を拡張した。 本研究で開発した病態セレクタ機能を実装した人工心肺装置操作シミュレーションプログラムECCSIMおよび急性透析操作シミュレーションプログラムHDSIMのプログラムおよびシナリオ、シミュレーションパラメータを会員制Webサーバ上で共有するためのポータルサイトを構築した。(http://eccsim.kenkyuukai.jp/)臨床経験者の主観的経験をシミュレーションパラメータに反映させる本サイトの立ち上げおよび内容を学会大会等で告知し、仮想患者モデルの学際的共有環境を構築する準備を整えた。 体外循環装置、透析コンソール等から表示装置へ送出される画像出力(アナログRGB出力)を分岐しイメージレコーダによりストリーミングし、さらに広島大学病院で稼働している体外循環装置(HAS-2, 泉工医科工業株式会社)とUSBコントロール通信により情報を収集するシステムを構築した。さらに臨床では自動記録されない静脈貯血槽内の血液量変化の情報を収集するため、新たに近赤外線測距センサを用いた静脈貯血槽血液量の非接触リアルタイムモニタリングシステムを開発した。本システムを広島大学病院において試験的に適用した結果、HAS-2に内蔵されたUSBコントロール通信の仕様に特殊な部分があり、データ収集のリアルタイム性を確保して必要な情報を確実に収集するためにはさらなる検討が必要であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インストラクターが自由に患者パラメータを設定、保存、再生可能な体外循環教育用仮想患者シミュレーションプログラムの開発に成功した。次の段階として、多岐にわたるパラメータと臨床経験者の主観的経験情報を結びつける病態エンコーダを実現する最適化手法の導入には、主に臨床経験者と最適化プログラムとの間のインターフェースをどのようにするのが最も使いやすいかという点で課題が残り、現在検討中である。 患者シミュレーションモデルを共有するためのポータルサイトについては、ただプログラムを提供するだけでなく、その活用方法と意義を周知させるためのコンテンツ(使用マニュアル、シナリオ集など)の充実が目的達成の鍵となると予測されるため、これらのコンテンツの作成を現在進行させている。 手術室における患者血行動態情報を非接触で収集するシステムの構築を行ない、患者血液量の推定に不可欠な静脈貯血槽のリアルタイムモニタリング手法の開発に成功したが、体外循環装置の内蔵する通信仕様の特殊性に起因する課題の解決にさらなる検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で構築した仮想患者モデルおよび患者パラメータ共有のためのポータルサイトの効果を定量的に検討するため、臨床経験者からの意見収集に基づく症例毎の標準的なシナリオの構築を進める。 また、前年度に構築した臨床情報収集システムを用いて、心臓手術における体外循環装置の操作と患者状態の変化についての定量的な関係をデータベース化し、本研究で導出した仮想患者モデルのパラメータがどれだけ臨床の状態を近似するかについて比較検討する。 さらに、本研究による仮想患者シミュレーションモデルを、広島大学病院に設置された体外循環装置操作訓練用シミュレーション装置(MERA-CPB Workshop)に導入し、各種治療シナリオに基づく模擬治療の成績により、本装置を導入したトレーニングの効果について定量的に検討する。PCPS、ECMO、人工呼吸器等の呼吸補助・補助循環装置の操作トレーニングへ同じ手法を適用し、その有用性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では手術室の静脈貯血槽の血液量モニタリングにCCDカメラを用いた方法を予定していたが、臨床従事者と事前協議した結果、貯血槽前面にCCDカメラを装着することが作業の妨げになる可能性が判明し、より小型の近赤外線測距センサを用いる方法に変更した。このため部品コストが大幅に低減した。また、体外循環装置のUSB通信機能を援用することで記録システムにかかる部品コストも低減した。 本研究で構築する手術室情報収集システムから得られる情報より、体外循環中血液の粘度変化および血液凝固状態も追跡できる可能性があり、本研究の患者モデル構築の上で有用である。しかし圧力、流量情報とこれらの血液物性値が臨床で用いられている人工臓器でどのように関連しているかについては、情報が大変少ない。来年度は、実験用血液(牛保存血)および試薬を追加購入し、人工肺、動脈フィルタ等における血液異常時の圧、流量の関係について検討したい。
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