2013 Fiscal Year Research-status Report
地域住民におけるソーシャルキャピタルと医療費及び介護費用の関連についての実証研究
Project/Area Number |
25460646
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
谷原 真一 福岡大学, 医学部, 准教授 (40285771)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ソーシャルキャピタル / 主観的健康観 / メンタルヘルス / 主観的経済状況 |
Research Abstract |
平成25年度は、平成23年度にF県T町が老人保健健康増進等事業として実施したソーシャルキャピタル(以後SC)に関する調査に協力が得られた12,489名について、データの匿名化及びデータベース作成を実施した。当該データベースを用いて、医療費分析の対象者に関する選択バイアスの影響などを検討する目的でSCと主観的健康観や生活習慣等に関する断面的な分析を実施した。主な結果として、1)性別、年齢、主観的経済状況を考慮した上でも低SC群の高SC群に対する「良くない」主観的健康観のオッズ比(95%信頼区間)は1.44(1.32-1.58)と統計学的に有意にSCが低い群は主観的健康観が低下していたこと、2)性別、年齢、主観的経済状況、主観的健康観を考慮した上でも高SC群が低SC群に対して高関心群となるオッズ比(95%信頼区間)は1.42(1.28-1.58)と統計学的に有意にSCが高い群は健康に対する関心が増加していたこと、3)高SC群が低SC群に対して、ストレスや気分がふさぐなどの心の問題により精神的な状態がすぐれない日が過去一か月のうち少なくとも数日は生じることのオッズ比(95%信頼区間)は0.90(0.82-0.99)と統計学的に有意にSCが高い群はメンタルヘルス悪化のリスクが低下していたことなどの結果を得た。また、平成23年度の事業において国民健康保険(及び後期高齢者医療制度)や介護保険に関するデータ利用に同意が得られた対象者4,177名について、平成20~24年度までのレセプト及び介護保険の匿名化されたデータを入手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究実施計画は、第一に、平成23年度にF県T町が老人保健健康増進等事業として実施したソーシャルキャピタルに関する調査に協力が得られた12,489名に関するデータベースを作成し、医療費分析の対象者に関する選択バイアスの影響などを検討する目的でソーシャルキャピタルと主観的健康観や生活習慣等に関する断面的な分析を行うことであった。年度当初において、福岡大学医の倫理委員会に疫学研究倫理申請を行って本研究に対する承認を受けることやF県T町と個人情報保護手順に関する合意を形成した後に分析を実施したが、ソーシャルキャピタルと主観的健康観の関連について検討した結果などを学会発表可能な段階まで進展させることができた。また、国民健康保険(及び後期高齢者医療制度)や介護保険に関するデータについても、匿名化処理を実施した上でリンケージ作業に必要なデータを得ることができた。データそのものの受け渡しが年度末に近かったため、データ整理作業などは平成26年度から実施予定であるが、昨年度に倫理委員会の承認を受けており、平成26年度当初から作業に取りかかることが可能な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、前年度作成したソーシャルキャピタルと国民健康保険(及び後期高齢者医療制度)及び介護保険の利用状況の関連について分析することをこの年度の主な目的とする。また、可能な限り傷病名を考慮した分析を実施する。わが国のレセプトにおいては傷病名の記載方法に統一された基準はなく、レセプトに記載された傷病名を分析する上での方法論は一定していない。本研究では電子化されたレセプトに記載される傷病名が「疾病及び関連保健問題の国際統計分類:International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems」の第10版(ICD10)に基づいた分類が実施されることに着目し、脳血管疾患などの要介護の原因として知られている傷病を主に検討する。電子化されたレセプトにおける未コード化傷病名の存在が分析結果に与える影響についての検討も必要に応じて実施する。紙媒体によるレセプトについては、全体に占める割合を考慮した上で必要に応じてデータベース化を実施する。さらに介護保険主治医意見書より要介護状態の要因と判断される傷病名を抽出して比較検討を実施する。従来のレセプト分析では十分考慮されていない「疑い」傷病名についても考慮した上で、ソーシャルキャピタルと医療費及び要介護状態の関連を分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国民健康保険(及び後期高齢者医療制度)や介護保険に関するデータについて匿名化処理を実施した上でデータリンケージ作業が可能な状況に到達したのが平成年度末に近かったため、受領したデータの整理作業については平成26年度から実施する方針に変更したことによる。 次年度使用額についてはデータ入力状況の確認や修正作業を行う人員に対する人件費として使用する予定である。
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