2014 Fiscal Year Research-status Report
地域住民におけるソーシャルキャピタルと医療費及び介護費用の関連についての実証研究
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25460646
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
谷原 真一 福岡大学, 医学部, 准教授 (40285771)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ソーシャルキャピタル / 医療費 / 診療報酬明細書 / 国民健康保険 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は平成23年度にF県T町が老人保健健康増進等事業として実施したソーシャルキャピタル(以後SC)に関する調査に協力が得られた12,489名の中で国保または後期高齢者医療制度(以後、後期高齢)の対象かつT町が保有する情報とアンケート調査の連結に同意が得られた4,177名を対象に平成23,24年度の一日当たり医療費の変化を分析した。SCの指標は、日常生活の様々な場面を27項目取り上げ、各場面で必要なときに助けてくれる人がいる場合を1点、それ以外を0点として、合計が9点以下の者を低SC群、10点以上の者を高SC群とした。平成23および24年度診療分の診療報酬明細書(以後レセプト)から医療費総額を求め、資格情報を用いて国保又は後期高齢の対象であった期間を求め、一日当たり医療費の変化を比較した。平成23年度中の国保または後期医療の資格喪失及び解析に用いた項目に欠損値があった177名を除外した4,000名(男1,790名:50.4%、女2,210名:48.7%)が最終的な解析対象となった。全体では低SC群の一日当たり医療費は平成23年度から24年度にかけて576円、高SC群では342円増加しており、低SC群の方が医療費の伸びは高くなっていた。この傾向は男女ともに認められ、性・年齢階級別の検討では男の70歳以上で低SC群と高SC群の一日当たり医療費の伸びの差がより大きくなっていた。 また、主観的社会経済状況などの交絡因子を調整した後もSCは睡眠の質と関連することや、電子化されたレセプトに記載された傷病名を分析する上での障害となり得る未コード化傷病名の分布を2010年5月診療分のK県国保連合会に提出されたレセプトから検討して傷病名全体の約10%が未コード化傷病名であったことと未コード化傷病名の出現パターンはレセプトの種類や傷病大分類によって異なっていたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の主要な研究実施計画は、前年度作成したソーシャルキャピタルと国民健康保険(及び後期高齢者医療制度)に関するデータベースから医療費について分析を実施することであった。F県T町と個人情報保護手順に関する確認を行った後に分析を実施し、ソーシャルキャピタルと医療費の関連について検討した結果を学会発表可能な段階まで進展させることができた。また、介護保険に関するデータについても、匿名化処理を実施した上でリンケージ作業に必要なデータを収集し、リンケージ作業を実施した。介護保険に関するデータのリンケージ作業が完了したのが年度末に近かったため、医療と介護を合算した分析は平成27年度当初から可能な体制が構築できた。 なお、追跡対象者の医療費に関する新規データの追加についてはF県T町の負担を考慮して最終年度である平成27年度にまとめて実施することとなった。そのため、現時点では当初の計画よりも追跡期間が1年分短いデータセットとなった。データリンケージ作業手順はこれまでと同様で有り、最終的なデータベースは当初計画通りに作成可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、要介護状態の発生及び介護・医療費にソーシャルキャピタルが与える影響の推計をこの年度の主な目的とする。多変量分析モデルを用いて年齢、性、飲酒、喫煙などの交絡因子を調整する。追跡開始後1年以内の観察打ち切り(死亡及び転出)を考慮した分析により追跡開始時点の健康状態を考慮した解析を実施する。要介護状態に陥ることなく死亡した対象者は転出と同様に観察打ち切りとして取り扱う。さらに、利用可能な直近の医療・介護データを追加して、観察期間を可能な限り延長した分析を実施する。
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Causes of Carryover |
追跡対象者の医療費に関する新規データの追加についてはF県T町の負担を考慮して最終年度である平成27年度にまとめて実施することとなったことから、平成26年度に使用予定であった匿名化処理に関する費用を平成27年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については当初の予定通りデータ匿名化処理に関する費用として使用する予定である。
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