2014 Fiscal Year Research-status Report
慢性炎症性疾患治療薬の開発を目指した抗ロイコトリエン単鎖抗体に関する基礎研究
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25460657
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
高橋 吉孝 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (10236333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 祐生 岡山県立大学, 保健福祉学部, 助教 (30453202)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ロイコトリエン / 単鎖抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
強力な炎症性脂質メディエーターであるロイコトリエンC4(LTC4)、LTD4、LTE4は、少なくとも3種類の受容体サブタイプ(CysLT1、CysLT2、およびCysLTE)との結合を介して、気管支喘息のような急性炎症性疾患だけでなく、肺線維症のような慢性炎症性疾患の増悪に関わる。これまでの実験で、抗LTC4モノクローナル抗体、ならびにそのH鎖とL鎖の可変領域をリンカー配列を介して連結した抗LTC4単鎖抗体が、CysLT1受容体ならびにCysLT2受容体のいずれに対するリガンドの結合も効率的に阻害することを、これらの受容体それぞれを過剰発現させたCHO細胞、CysLT1受容体を発現するヒト単球性白血病細胞株THP-1、ならびにCysLT2受容体を発現するマウス血小板をを用いて証明し、また、実際に抗LTC4モノクローナル抗体を気管支喘息モデルマウスに投与すると、喘息の所見の改善を認めることを示した。本年度はマウス肺からCysLT1受容体ならびにCysLT2受容体を発現する線維芽細胞を調整し、LTC4あるいはLTD4で刺激したときに起こるコラーゲン遺伝子COL1A1とCOL1A2の発現上昇が、抗LTC4モノクローナル抗体あるいは抗LTC4単鎖抗体によって抑制されることを示した。 また、昨年度の実験で抗LTC4単鎖抗体の酵母による発現系を構築し、大腸菌の発現系と比較して発現量とリガンド親和性を上昇させることに成功した。本年度はリガンド結合抗LTC4モノクローナル抗体のX線結晶解析結果に基づいて単鎖抗体変異体を網羅的に作成し、酵母を用いて発現させたところ、変異体の中に野生型単鎖抗体と比較してLTE4への親和性が上昇するものが複数見出された。この中の一つは、変異させたアミノ酸とLTE4の間に新たな水素結合が形成されていることが構造モデルから示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度に実施予定としていた単鎖抗体変異体の網羅的作成については、予定通り実施され、実際にその中にロイコトリエン結合性の変化を認めるものを複数見出すことにより、リガンドの特異的認識に関わるアミノ酸の同定に成功しているばかりでなく、構造モデルを用いて理論的な裏付けも行われている。また、マウス肺線維芽細胞を用いて、抗体の肺線維症への有効性を証明するための予備実験にも成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
変異体と構造モデルを用いてリガンドの特異的認識に関わるアミノ酸の同定をさらに進めるとともに、リガンド親和性の上昇する変異体を見出し、抗体治療薬としての可能性をさらに高める。また、抗体上で同定されたリガンドの認識にかかわるアミノ酸に相当するロイコトリエン受容体上のアミノ酸を特定し、その変異体を作成して分析することにより、受容体によるリガンド認識機構の解明をめざす。
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Research Products
(3 results)