2013 Fiscal Year Research-status Report
短パルス光の機械的・音響的作用を用いた血液脳関門の新規制御・評価技術の創出
Project/Area Number |
25460665
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
佐藤 俊一 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 防衛医学研究センター, 准教授 (90502906)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 泰司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 講師 (10505267)
川内 聡子 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 防衛医学研究センター, 助教 (20506505)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 血液脳関門 / 薬剤輸送 / フォトメカニカル波 / ナノ秒パルスレーザー / エバンスブルー / 光音響イメージング / 薬剤分布 |
Research Abstract |
1. フォトメカニカル波(PMW)を用いた血液脳関門(BBB)開通技術の確立 健常ラット脳を対象に,BBBを安全に開通させうるPMWの条件について調べた。頭蓋骨を開窓し,標識薬剤としてエバンスブルー(EB)を尾静脈注射後,開窓部脳表に光吸収体(ターゲット)を置き,フルエンスを変化させてナノ秒パルスレーザーを1パルス照射しPMWを発生させた。4時間後に同ラットを灌流固定して脳を摘出し,漏出したEBの組織内分布を観測した。その結果,EBの漏出はレーザーフレンス0.3 J/cm2(ピーク圧力約41 MPa)以上で発生すること,また0.5 J/cm2(ピーク圧力約66 MPa)以上ではEBの漏出とともに,60%の確率で硬膜下および皮質に出血が生ずることが観測された。これより,健常脳に対してPMWにより肉眼的損傷なくBBBを開通しうる条件が明らかになった。 2. 光音響断層イメージング(PAT)法による脳組織内薬剤動態評価技術の確立 開発した音響的解像度(音響レンズの集束性により解像度を確保する方式の)光音響イメージング装置を用い,健常ラット脳を対象にin vivoにおいて血管およびPMWにより漏出させた薬剤(EB)分布の画像化を試みた。励起波長にはそれぞれ532 nm(酸素化,脱酸素化ヘモグロビンの等吸収点に近い波長),610 nm(EBの吸収ピークに近い波長)を用いた。その結果,血管に関しては直径 50 micron程度の細動脈,細静脈を画像化できることが明らかになった。しかし組織深度2 mm付近では分解能,信号レベルともに低下し,改善が必要である。薬剤分布については,水平方向には正確な画像化ができたものの,垂直(深さ)方向には光音響信号の負圧の影響により実際の分布を再現できず,これを補正するための信号処理が必要であることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画に関し,フォトメカニカル波(PMW)を用いた血液脳関門(BBB)開通技術の安全性評価,脳深部(> 2 mm)血管の光音響イメージング等に遅れが生じている一方で,2および3年度に計画しているグリオーマの治療実験,臨床応用のための要素技術の開発を先行して進めており,総じておおむね順調に進展していると評価しうる。
|
Strategy for Future Research Activity |
フォトメカニカル波(PMW)を用いた血液脳関門(BBB)開通技術は,グリオーマ治療への応用を目指している。そのための送達薬剤として,定量評価を行いやすい光線力学的治療薬(光感受性薬剤)を想定しているが,より需要の大きい抗がん剤を対象にできないか検討を行いたい。 送達薬剤分布の評価を目的とした光音響イメージング技術については,深部血管の画像化,薬剤深さ分布の画像化になお課題を残していることから,2年度以降も検討を継続したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
生じた次年度使用額は1万円以下であり,ほぼ計画通りに使用できたと考えている。2年度以降の使用計画について大きな変更はない。 上記次年度使用額は実験動物の購入に当てる。
|