2017 Fiscal Year Research-status Report
虚血変性アルブミンとParaoxonase-1による脳血管障害の血中マーカー開発
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25460701
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
木村 聡 昭和大学, 医学部, 教授 (30255765)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 虚血変性アルブミン / 低酸素血症 / 慢性呼吸不全 / 長期マーカー / 脳血管障害 / 在宅酸素療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳血管障害の重要な予後因子である呼吸不全は、慢性、急性を問わず死亡の原因となる重大な病態である、通常、呼吸が維持されている患者において、重症度評価の目的で測定される血液ガスや酸素飽和度は、その瞬間の酸素濃度を示す指標であり、必ずしも長期間の低酸素状態を反映しない。慢性的な呼吸不全患者において、患者の容態急変はよく遭遇する現象であり、その予知には、長期間での呼吸不全状態を反映する指標が求められている。 本研究では、組織虚血マーカーであるIschemia Modified Albumin (IMA)とParaoxonase-1 (PON1)の2つを候補と捉え、検討を行ってきた。IMAは、虚血状態においてN末端アミノ酸8個に非可逆的変性をきたしたアルブミンである。アルブミンの血中半減期は約1週間であるため、糖尿病における血糖値とグリコアルブミンの関係の如く、IMAが過去1週間の低酸素状態の指標に使える可能性がある。 本研究では倫理委員会許可のもと、被験者の同意が得られている慢性呼吸不全患者の血清を用いてIMAが仮説通り長期的低酸素血症の指標となる可能性を証明できた。計画書にも記載のある米国Touro大学生化学教室Gugliucci教授との共同研究で、さまざまな分析条件で検討した結果、ようやくpilot studyながら国際学会に発表できる段階に到達した。また一流英文雑誌であるClinical Chemistry and Laboratory Medicineにも2018年4月にacceptされ、近日掲載の予定である。 我々の検査法は、「比色法」という非常に簡単な原理で実施できるため、将来は自動分析機に搭載して緊急検査にも対応し得る分析法である。しかし臨床現場で実際に応用するには、従来の指標との比較検討など、多くの症例で検証が必要であり、今後も検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる実施場所である当院臨床検査部が、大学の方針でやむを得ず別棟に移ることとなり、2014年以降の機器・試薬購入が困難な状況が発生、一時的ながら研究の進行が遅れた。しかし、その後国際会議での発表、討論を通じさまざまなアイデアを試す機会を得たため、無事研究を進行させることができた。研究計画では自動分析機への搭載までを目標としていたが、その基礎データを得るところまで到達する見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今回研究を行ったIMAは、慢性呼吸不全のバイオマーカーとして有望であることが証明されたため、これを日常臨床に応用すべく、以下の活動を予定している 1)より多数、かつ多様な症例でのIMAの変動を追跡する 2)自動分析機への搭載に向け諸条件を整える 3)臨床検査領域から呼吸器科、救急医学科への啓発を行う 慢性呼吸不全の患者数は多いため、その救命とQOL改善に本研究を役立てる所存である。
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Causes of Carryover |
本研究の主たる実施場所である当院臨床検査部が、大学の方針でやむを得ず別棟に移ることとなり、2014年に機器・試薬購入が困難な状況が発生、一時的ながら研究の進行が遅れた。上記理由に加え、残額が生じた理由は、論文の投稿料、掲載料、並びに追加検体の収集、保管、搬送に供するためであり、平成30年度中に支出を完了する見込みである。
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