2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25460707
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
西矢 芳昭 摂南大学, 理工学部, 教授 (70612307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 隆臣 信州大学, 繊維学部, 助教 (90362110)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 酵素センサ / 電界効果トランジスタ / pH変化 / 信号累積 / バイオ計測システム / 生体成分分析 / 臨床検査 / 食品検査 |
Research Abstract |
新規半導体センサである信号累積型イオン感応性電界効果トランジスタ(Signal Accumulation Type of Ion Sensitive Field Effect Transistor;SA-ISFET)を応用し、極めてシンプルな汎用バイオ計測システムを構築することを最終目的とする。平成25年度は、SA-ISFETによる微量生体成分の分析法を確立すること、核酸合成反応の検出と遺伝子検査への応用の目途をつけること、の2課題に焦点を当てて検討を実施した。 1.微量生体成分の分析法の確立 (1)具体的な測定対象として、まず腎不全や食品検査、乳牛管理等の汎用マーカーである尿素を選択し、分析法を検討した。結果として、累積効果により約10倍の感度上昇を果たし、1酵素のみのシンプルな測定法を確立した。分析技術として必要な測定の直線性、同時再現性および日差再現性も十分なレベルに収まった。 (2)癌マーカー候補のサルコシン、あるいはグリシンやD-アミノ酸の分析法開発のため、グリシンオキシダーゼを使用した測定法を検討している。本酵素はわれわれが初めて発見し、さらに特性の異なる酵素を種々のグラム陽性細菌から取得し、精製標品を調製した。それらの酵素にてSA-ISFETセンサを構築中である。尿素と同様、1酵素のみでシンプルに測定可能を確認している。 2.核酸合成反応の検出と遺伝子検査への応用 核酸合成反応の検出として、T7RNAポリメラーゼを用いたRNA合成反応の検出を検討した。核酸合成ではピロリン酸が生成し、最終的に水素イオン濃度が上昇する。この濃度変化を、SA-ISFETでの10倍累積にて検出することができた。本反応は、すでに遺伝子検査法として実用化されているが、SA-ISFETを用いることにより光学系のいらない極めて簡便な遺伝子検査システムを構築することができる。装置の小型化も容易である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、SA-ISFETを用いた微量生体成分の分析法を確立すること、および核酸合成反応の検出に目処をつけることを目標に、検討を進めた。 結果として、尿素測定をモデルとした微量生体成分の分析法を確立することができた。心配した実用性についても、反応条件を最適化することにより十分な再現性を得ることができた。計画時は具体的な測定対象として、サルコシンやグリシン、D-アミノ酸などのアミノ酸類をモデルに検討する予定だったが、汎用性の高いマーカーである尿素にモデルを変更した。測定方法開発に対する経験値も高まったため、今後は様々な微量生体成分の分析法開発へと水平展開を進めていく。応用分野として、臨床検査を始めとする予防医学分野はもとより、食品分析や環境分析も視野に入れている。 核酸合成反応の検出については、モデルとしてT7RNAポリメラーゼを用いたDNA依存RNA合成反応の検出を検討した。原理的には、SA-ISFETによる検出は可能と考えられた。しかし感度面は未知数だったが、核酸合成反応による水素イオン濃度変化を10倍累積にて検出することができた。遺伝子検査法として汎用されているのはPCRであり、本来ならばPCRへのSA-ISFETの適用を検討すべきであるが、温度シフトに関わる設備の作成にコストがかかってしまう。そこで今回は、RNA合成反応を対象とした。T7RNAポリメラーゼの核酸合成反応で生じたRNAを、蛍光試薬による光学的測定で検出する技術は、等温RNA増幅法と呼ばれ、すでに遺伝子検査法として実用化されている。これに対しSA-ISFETを適用すれば、光学系のいらない小型でシンプルな遺伝子検査システムを開発することができる。 以上より、当初に平成25年度の研究実施計画として掲げていた内容にしたがって検討を進めており、多少の方策修正はあったものの、期待した成果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画にしたがい、SA-ISFETを応用した極めてシンプルな汎用バイオ計測システムを構築することを最終目的とする。 平成26年度は、平成25年度の研究成果を基に、アミノ酸類、尿酸、乳酸など様々な測定項目の酵素法測定系の開発を進める。酵素免疫測定法を視野に入れた測定系の検討も行う。 平成27年度は、本研究の集大成として、SA-ISFETを搭載した分析用小型化装置の開発を目指す。そして、平成25~26年度に構築した種々の測定法のプラットフォームとなる装置を具現化する。計画の変更点として、小型化装置の開発には時間を要するのではないかという危惧があり、装置の基本構成の開発は平成26年度に前倒しし、平成27年度にはシステム構築を行うスケジュールとしたい。 種々の臨床検査項目を自己診断可能な簡易システムが構築できれば、予防医学に役立ち、将来的には医療費削減への貢献も期待される。SA-ISFETの場合、項目開発は平成25年度の開発をベースに行えるため、実用化の可能性は高いと考える。また、われわれは日本臨床化学会や生物試料分析科学会といった臨床検査分野の学会員であり、システム構築に際して臨床検査の現場に近い専門家の意見を伺い、アドバイスを得ることが容易である。平成26年度中に、pH計でpHを測定するように手軽に分析ができるシステムの構築、に目処をつけたい。 検査・分析システムが新たに普及するには、現場レベルでの測定を可能とする技術が重視される。そのようなシステムに要求されるのは、簡便性、低コスト化、迅速性、そして装置の小型化および可搬性などである。ISFETメーカーである(株)バイオエックスの協力のもと、簡易分析・検査装置の開発、具体的には片手で持ち運べる装置の開発を目指す。小型化および規格化が容易というISFETのメリットを活かすことにより、開発成功の可能性は高いと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画当初は、半導体であるSA-ISFETセンサユニットの消耗が早いと想定していたが、実際には想定よりもずっと長寿命であった。一方、非量産である小型装置の作製には計画当初より費用を要することが分かった。 次年度使用額は、当初予算の一部と合わせて小型装置の作製に利用する。
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