2013 Fiscal Year Research-status Report
環境癌における3p21領域ゲノム構造異常の詳細解析
Project/Area Number |
25460710
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
江見 充 兵庫医科大学, 医学部, 特別招聘教授 (90221118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉置 知子 (橋本 知子) 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10172868)
吉川 良恵 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (10566673)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ゲノム不安定性 / ゲノムコピー数 / 環境癌 / アレイCGH / MLPA |
Research Abstract |
染色体3p21領域は種々の癌で欠失が集積する部位として知られており、特に環境癌である悪性中皮腫や透析腎がんにおいては高頻度で認められる。従来のアレイCGHは10kbから1Mbの欠失・増幅、次世代シークエンサーは数bpから数十bp程度の塩基置換や欠失、MLPA法では100-200bpの検出に優れている。よって百~数kb程度のゲノムコピー数変化を精度良く検出することが難しく、現状ではゲノムコピー数変化の全貌を捉えられていない。そこで、3p21領域内で微小なコピー数異常を精度良く検出する手法を確立することを目的とし、アジレント社CGHカスタムアレイを構築した。リピート配列やGCリッチな配列を避け、3p21領域ではプローブ間隔平均を254bpとし,3p21周辺(3p22.1, 3p14.3)に93プローブ,その他染色体にnormalization用プローブを配置した。アレイ検証実験として、同一reference DNAをCy3及びCy5標識し、競合ハイブリダイゼーションの結果、全プローブの99.3%が有意にシグナル検出され、99.83%が1.5倍差以内に収束した。前後のプローブを含めmoving average処理することで、腫瘍混入率が20%でもコピー数変動を捉える事ができると判断された。 既に市販SNPアレイによりBAP1遺伝子の欠失が検出された悪性中皮腫(MM)検体を用いCGHアレイ解析の結果、BAP1の欠失が確認された。さらに、BAP1以外の3p21領域には前記SNPアレイでは検出できなかったが、いくつかの遺伝子に数エクソン程度の微小ホモ欠失が検出された。これら遺伝子欠失については、MMでの報告は無い。この内3遺伝子について検証したところ、PCRで欠失が確認でき、他の悪性中皮腫検体の塩基配列解析を実施したところ変異が検出されることから、悪性中皮腫の発症・進展に関与する可能性が示され、新規知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MLPA((Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification)によるBAP1コピー数解析も実施し、CGHアレイと比較したところ完全に一致しなかったことから、その原因究明に時間を費やした。アレイ解析については7検体しか実施できず、目標とした検体数に達していない。 すなわち、染色体が異数性を示し、3p21領域のほとんどが1アレル欠失している検体については、欠失が捉えにくく、normalization法を工夫する必要があることが判明した。そこで全プローブと3p以外のプローブによる2種類のnormalizationを実施し、他の知見と合致するnormalization手法を採用することにした。また、アレイではBAP1の一部エクソンの欠失が捉えられておらず、MMでは欠失領域と類似する配列が存在し、偽陽性を示す可能性が示唆された。CGHアレイでは類似配列を検出している可能性があり、ハイブリダイゼーションや洗浄条件を厳しくすることも検討しているが、反面厳しくすると検出率が下がる。類似配列を検出しているのであれば、その原因を探る過程で新たなゲノム変化を捉えられるきっかけにもなる。 癌検体の百~数kb程度の欠失や重複に関しては検出が難しいことから、これまであまり研究対象とされてこなかったが、本アレイは微小領域のコピー数変化を検出するスクリーニング目的としては十分機能していると考えられ、弱点も踏まえたうえで活用することとした。 一方、目標以上の成果としては、3p21領域内で悪性中皮腫で変異頻度の高い癌関連遺伝子を3個見出した。この領域の塩基配列解析も実施しており、欠失以外に塩基置換変異も見つけており、新規知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに悪性中皮腫と腎細胞がんのゲノムDNA32検体は準備できているので、CGHアレイ解析を引き続き実施する予定である。 欠失や重複などのゲノム構造異常を示す頻度の高い遺伝子の機能と癌発症への寄与について、知見を得る。現時点においても複数検体で構造異常を示す遺伝子が5個以上あり、今後さらに増えることが予想される。よってノックダウンやトランスフェクション実験をすべての遺伝子について実施することは不可能である。そこでこれら遺伝子に共通する機能があれば、それら機能と癌発症との関連性を探る。また、悪性中皮腫ではMSH,MLHなどの修復遺伝子の変異は無かったが遺伝子不安定性があり、その原因究明は新たな癌発症メカニズムとして興味深く、遺伝子不安定要因の解明に注力する。 さらに、欠失や重複が生じているゲノム切断点の塩基配列について調べその特徴を捉えたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ほぼ計画通りに実験研究に必要な物品を購入したが、研究支援者への人件費の支払い額が3月中旬まで確定せず、わずかな額が残った。 研究支援者への3月分の人件費は次年度4月に支払われるため残額は人件費へ充当予定である。 次年度はゲノムDNA抽出試薬やシーケンス解析試薬などの購入が必要で計画的に使用したい。
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