2013 Fiscal Year Research-status Report
アトピー性皮膚炎の痒み発生への皮膚アスパラギン酸プロテアーゼSASPaseの役割
Project/Area Number |
25460717
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
安東 嗣修 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (50333498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 毅 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 上級研究員 (10452442)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 痒み / アトピー性皮膚炎 / SASPase / プロテアーゼ / 抗ヒスタミン薬 |
Research Abstract |
アトピー性皮膚炎は,激しい痒みと皮膚の乾燥を伴う慢性炎症性皮膚疾患である。アトピー性皮膚炎の痒みの抑制は,患者のQOLの向上に加え,皮膚炎の抑制につながることから治療の最優先課題となっている。しかし,アトピー性皮膚炎の痒みは,痒みの第一選択薬である抗ヒスタミン薬では抑制されない場合が多く,新規鎮痒薬の開発が急がれている。これまでにアトピー性皮膚炎マウスモデルの皮疹部皮膚でのプロテオーム解析により,皮膚レトロウイルス型アスパラギン酸プロテアーゼ(SASPase)の発現増加が観察された。そこで,本研究では,SASPaseの痒みへの関与に関して検討した。実験には,皮膚炎の発症したアトピー性皮膚炎マウスモデル(皮膚炎NCマウス)と,健常コントロールマウス(健常NCマウス)を用いた。マウスからクローニングしたSASPaseを健常NCマウスに皮内注射すると痒み反応である後肢による注射部位への掻き動作が観察された。皮膚炎NCマウスへのSASPaseaの皮内注射は,健常NCマウスに比べ更に掻き動作が増加した。熱処理したSASPaseでは,掻き動作が起こらなかった。このことは,酵素活性が掻き動作の惹起に重要であることを示す。さらに,μオピオイド受容体拮抗薬ナルトレキソンによりSASPase誘発の掻き動作が抑制され,更に,SASPaseのマウス頬への注射により後肢による掻き動作は認められたが,前肢による擦り動作は認められなかった。以上のことにより,SASPaseの皮内注射によって惹起された掻き動作が痒み様の反応であることが示唆される。SASPaseによる掻き動作は,抗ヒスタミン薬で抑制されなかったことから,この痒み反応へのヒスタミンの関与は小さいと考えられる。以上の結果から,SASPaseが痒み因子であり,抗ヒスタミン薬抵抗性の痒み反応を惹起することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的は,アトピー性皮膚炎の痒みへのSASPaseの役割である。マウスへのSASPaseの皮内注射により,掻き動作が惹起され,この動作が痒み反応であることを明らかにした。さらに,SASPase誘発の痒み反応が抗ヒスタミン薬で抑制されないことも見出した。アトピー性皮膚炎マウスの皮疹部でのSASPaseの増加と上記成果を勘案すると,SASPaseがアトピー性皮膚炎の痒みの発生に重要な役割していることを示唆している。さらに,SASPaseの皮内注射による痒み反応が,健常マウスに比べ,皮膚炎マウスで増加していたことは,SASPaseが直接神経を活性化したのではなく,皮膚内で新たに産生された物質のプロセッシングにSASPaseが関与しており,新たな痒み因子の産生にSASPaseが寄与していることが考えられる。このことは,SASPaseによって活性化する皮膚内因子の分析の重要性を示唆する。以上のことから,当初想定していた研究計画を進めるうえで重要な知見を得ていることから,研究が順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにSASPaseが痒み因子であること,特にアトピー性皮膚炎の痒みに重要な役割を担っていることを示唆する成果を得てきた。今年度は,SASPaseによる痒み発生機構の解明に必要な情報を取得するための研究を中心に行う。 ①皮膚でのSASPaseの活性測定,②免疫組織染色法を用いた皮膚内でのSASPase産生細胞の同定,③2次元電気泳動並びにMALDI-TOFを用いた皮膚におけるSASPaseによって活性化,不活性化因子の同定を行う。また,SASPaseノックアウトマウスを用いたアレルギーや乾皮症のモデルマウスの作出を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本学薬学部研究棟の耐震改修工事により数か月間アトピー性皮膚炎マウスを用いた行動実験ならびに,当研究室の共焦点レーザー顕微鏡が使えなかったことから,動物の購入飼育並びに免疫染色に使用する抗体が購入できなったこと,さらに当初予定していた行動観察用ビデオカメラおよびデッキが購入できなったことから次年度使用額が生じた。 耐震改修工事が終了し,4月より本格的に研究再開ができたことから,アトピー性皮膚炎マウスの購入,免疫染色用抗体,ビデオカメラ,並びにビデオデッキなどの購入に予算を使用する。
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