2014 Fiscal Year Research-status Report
急性冠症候群の系統的実態把握ならびに救急搬送・診療ストラテジーの確立に関する研究
Project/Area Number |
25460750
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川村 孝 京都大学, 健康科学センター, 教授 (10252230)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石見 拓 京都大学, 健康科学センター, 教授 (60437291)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 予防医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、急性冠症候群患者の治療成績改善のため、病院前の救急搬送体制及び、病院到着後の治療に関するデータを前向きに登録・分析し、『救急搬送される急性冠症候群の実態を把握し、適切な救急医療体制ならびに治療ストラテジーを検討すること』を目的とする。 研究2年目となる平成26年度は、研究代表者と研究分担者が平成25年度に設定した急性冠症候群における病院前の救急医療体制ならびに病院内での治療内容を包括した内容の項目をWeb登録システムに実装した。項目としては、基本情報である性別・年齢・入電(患者から消防へ電話)時刻・搬送先病院名など、また急性冠症候群をST上昇型急性心筋梗塞・非ST上昇型急性心筋梗塞・不安定狭心症に分類し、症状の発症時刻・血栓溶解療法・冠動脈形成術・再灌流時刻・責任病変・心不全合併・多枝病変、既往歴である。本研究のレジストリを実施するフィールドとして、大阪府の泉州地域の基幹病院の半数にあたる4病院から研究参加協力の同意を得て、モデル地域として平成26年12月初旬から症例登録を開始した。 登録開始後から、消防によって救急搬送され入院した登録症例は585件であり、そのうち16件が急性冠症候群症例であった。平成27年度からは泉州地域での本レジストリ参加施設を増やすための働きかけをし、さらなる症例登録増加を見込んでいる。研究事務局にデータマネージャーを確保し、データの質を維持するとともに研究参加施設の現場負担を極力減らし、登録症例数を確保する予定である。登録症例を増やすためにも、システム運用開始後に生じたレジストリに関わる課題を整理・改善し、研究のフィージビリティ向上を図り、最終的には地域をできるだけ網羅して急性冠症候群に対する搬送先状況、病院到着後の治療の実態を明らかにすることを目指す予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年度目となる平成26年度は、研究代表者と京都大学・大阪大学の研究分担者が中心となって平成26年度に設定した急性冠症候群における病院前の救急医療体制ならびに病院内での治療内容を包括した内容の項目をWeb登録システムに実装した。 項目としては、基本情報である性別・年齢・入電(患者から消防へ電話)時刻・搬送先病院名などをコア項目とした。また医師の診断に基づいて急性冠症候群をST上昇型急性心筋梗塞・非ST上昇型急性心筋梗塞・不安定狭心症に分類し、症状の発症時刻・血栓溶解療法・冠動脈形成術・再灌流時刻・責任病変・心不全合併・多枝病変などの治療内容と、高血圧などの既往歴を詳細項目としてレジストリに必要な項目である。 本研究のレジストリを実施するフィールドとして、大阪府の泉州地域の4病院から研究参加協力の同意を得て、モデル地域として平成26年12月初旬から症例登録を開始した。登録開始から3か月間で、消防によって救急搬送され入院した登録症例は585件であり、そのうち16件が急性冠症候群症例であった。急性冠症候群における病院内治療情報と病院前救護情報を包括的に集めるモデル地域としての基盤構築に成功したが、対象地域を網羅するには至っておらず、残りの4つの基幹病院への登録参加を呼びかけていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度も前年と同様に、研究分担者、大阪府や消防組織等などの行政組織、症例登録に関係する病院機関との打ち合わせを定期的に実施し、研究遂行にあたっての問題点を改善していく。平成27年度は、現在登録中の4施設に加えて、泉州地域での網羅的な登録を目指し、参加施設の拡大のため各病院に働きかけを行っていく。これにより、さらなる症例登録数の増加が見込まれる。研究事務局にデータマネージャーを確保し、データの質を維持するとともに研究参加施設の現場負担を極力減らし、登録症例数を確保する。病院前での救護記録に関しては、それらのデータを地域の消防本部から入手し、匿名化した状態で連結を行う予定である。 本研究では、急性冠症候群の病院到着後の治療体制、治療内容の実態把握、予後予測因子などの検討を目的としており、地域をできるだけ網羅して急性冠症候群に対する搬送先状況、病院到着後の治療の実態を明らかにすることを目指している。そのためには、研究事務局が地域の病院ならびに消防行政と密に連絡を取り合い、協力し合うことで現場の負担を極力減らし、登録並びにフォローアップ率の向上を目指す。さらには、本研究で得たノウハウを共有し、登録を拡大するために、関係学会等に呼びかけて対象施設の大阪府全体ならびに府外への拡大への提案を試みる。 平成27年度後半から28年度にかけては、システム運用開始後に生じたレジストリに関わる課題を整理・改善するとともに、集積されたデータのクリーニングならびに解析を行い、得られた成果の報告と情報公開を行う。研究成果の発信方法としては、英語原著論文、国内、国際学会での発表などを予定している。
|
Causes of Carryover |
研究分担者・協力者間の定期的な会議ならびに実務者によるWG会議(それぞれ年間4回程度を予定)を行うための交通費、会議費、レジストリ研究の運営に関わる物品費を計上した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度も引き続き、効果的かつ維持・運営のしやすい症例登録システムおよび体制を構築し維持する必要がある。これは、質の高い研究データを得るために、不可欠であり、本研究の遂行上もっとも重要な、データの登録・マネジメント補助を行うための、データマネージャーに対する謝金に要する経費を計上した。 データ登録システムの構築・維持および管理にあたっては、開発ノウハウを有する企業に委託を行う必要がある。個人情報を保護したうえで、他施設から集積される情報を管理するために、外部のサーバを利用したデータ管理が必要であり、この経費も計上した。
|