2013 Fiscal Year Research-status Report
ニコチン酸及びその代謝関連酵素の血中濃度と循環器疾患リスクに関する地域疫学研究
Project/Area Number |
25460824
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
東山 綾 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (20533003)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生活習慣 / BNP / 左室肥大 / ニコチン酸 |
Research Abstract |
平成25年度は、篠山市と神戸市の一般住民を対象に、生活習慣などの健康情報の聴取と採血・生理学的検査を含む疫学調査を実施した。 篠山市では市の実施する集団特定健診において、国民健康保険加入者の40~64歳の男女約860名を対象に、生活習慣や血栓症などの現病歴の聴取・血中D-ダイマーやTATの測定・動脈硬化度の測定(CAVI)・血液検体の凍結保存を行った。CAVIでは、平成26年1月・2月に受診した男性を対象に、足首の運動負荷検査の前後でもデータを取得した。凍結した血液検体は、本申請課題と関連するニコチン酸関連物質を今後測定する可能性がある検体として、今後も兵庫医科大学内で保存する。 神戸市では、市の協力を得て実施している前向きコホート研究の対象者である、健康なボランティア集団の男女約500名において、生活習慣や現病歴の聴取・骨密度や動脈硬化度の測定(CAVI)・血液検体の凍結保存を行った。神戸市で採取した凍結血液検体も、本申請課題に関連する物質を後日一括して測定できる可能性があり、契約している保管施設において保存を継続する。 申請者は、吹田市一般住民集団を対象に、循環器疾患リスク指標としてのBNPと心エコー検査結果との関連も検討している。上記の篠山や神戸の集団でも、BNPを左室肥大をはじめとする前心不全状態の評価指標として用いられるかを検討するため、BNPと心エコー検査で測定した左室心筋重量の関連を検討した。この結果は、平成25年10月24~26日に行われた日本高血圧学会総会で発表した。BNPは左室肥大と関連があることが示された。心疾患の予防を考える上で、BNPを一般住民で測定することにより、左室肥大の存在を評価することが可能であり、ニコチン酸関連物質、もしくはニコチン酸の摂取とBNPの関連を検討することで、新たな心不全予防策を考えることができる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
篠山市での健診をベースにした疫学調査は、平成25年度が兵庫医大による調査が開始されてから2年目の年にあたる。1年目である平成24年度の調査協力者は約670名であったが、平成25年度は約200名増の約860名の研究協力者を得ることができた。すべての対象者から凍結血液検体を取得しており、またすべての凍結血液検体には基本的な生活習慣や健康指標が付随しているため、本課題を検討する上で必要なデータベース構築のための基盤が整いつつある。 神戸市における疫学調査は、約1110名の対象者が確定しているコホート研究をベースにしている。本年度の調査終了により、ほとんどのコホート研究対象者においてベースライン調査および、2年に1度の追跡調査の第1回目が終了したことになる。このコホート研究をベースに、様々な研究が行われているため、ベースライン調査で取得した凍結血液検体の残数が少なくなりつつあるが、追跡検査で取得した凍結血液検体は、血漿・血清ともまだ検体数が十分確保されており、本課題に関する指標を一括して測定できる環境が整いつつある。 市町村の健康福祉関連部署の業務が複雑化し、業務量が膨大になる中で、自治体の協力を得ながら実施している篠山市や神戸市の、現世代を対象にしたコホート研究・疫学研究は、非常に貴重な存在である。新たなコホート研究を創設し、課題を検討できる基盤づくりとして、研究は順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
篠山市では、平成26年度にこれまでと同様の手法で疫学調査を行い、ニコチン酸関連物質を測定できる凍結血液検体の数をさらに増やしておく計画である。平成26年度が終了した段階で、平成24年度の凍結血液検体とともに、ニコチン酸関連物質の測定を実施できた場合、短期間ではあるが一部の対象者で追跡期間を伴うコホート研究にまとめられる可能性がある。 神戸市では、平成26・27年度にコホート研究の追跡調査第2回目を行う予定である。神戸市においても、これまでと同様に生活習慣や病歴、血液検体の採取と凍結を行い、内臓脂肪面積の測定など新たな項目を追加しての疫学調査を実施するとともに、ニコチン酸関連物質を測定できる凍結血液検体を確保する。平成26年度対象者は、平成24年度に追跡調査の1回目を受けているため、24・26年度の両方の検体でニコチン酸関連物質を測定できれば、2年の追跡期間を伴うコホート研究の実施が可能となる。 またBNPのように、ニコチン酸関連物質との関連を検討すべき物質や検査項目の追加も念頭に、今後の疫学調査で新たな物質の測定や検査を追加していくことを検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
篠山・神戸における疫学調査で、血液検体をマイナス80度で凍結保存できる環境が整ったことと、今後追跡期間の前後で値を比較することが可能となれば、前後の検体を同じタイミングで測定できることがよりのぞましいため、ニコチン酸関連物質の測定を次年度以降に行うことにしたことが、次年度使用額が生じた主な理由である。可能であれば、過去にもしくは今後凍結保存する血液検体で、追跡期間がなるべく長くなるような組み合わせを設定し、追跡の前後でロットが同じになるよう検査試薬を購入して測定できることが最ものぞまれる。 ニコチン酸関連物質の測定は、平成26年度中もしくは平成26~27年度はじめに行う予定である。試薬の購入などで、研究費を使用する時期としては平成26年度中となる可能性が高いが、平成27年度も、篠山・神戸ともに疫学調査を継続する予定であることから、より質の高いデータを出せるよう、研究期間内の適切な時機をみはからって実施したい。 また平成26年度・27年度ともに、研究を実施する上で基本となる健康情報を収集・測定するスタッフの雇用は必要であり、場合によっては平成25年度よりもスタッフの人数を増やす必要もあるため、これらのスタッフにかかわる人件費にも使用する。
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Research Products
(1 results)