2014 Fiscal Year Research-status Report
放射線損傷塩基である5,6-ジヒドロチミジンを指標とした新規照射食品検知法の開発
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25460833
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
高取 聡 大阪府立公衆衛生研究所, その他部局等, 研究員 (90311480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
起橋 雅浩 大阪府立公衆衛生研究所, その他部局等, 研究員 (60250312)
北川 陽子 大阪府立公衆衛生研究所, その他部局等, 研究員 (20280836)
福井 直樹 大阪府立公衆衛生研究所, その他部局等, 研究員 (90516717)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 食の安全 / 放射線照射 / 照射食品 / 検知法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では放射線照射時に細胞中の DNA 中に生成する特異的な損傷ヌクレオシドである 5,6-dihydrothymidine (dDHT) を新たな検知指標として着目し、多様な食品に適用可能な照射食品の新規検知法の開発を目標としている。 γ線照射した牛生レバー(以下、レバー)中に生成した dDHT の高感度分析法を構築した。レバーからフェノール・クロロホルム抽出法により DNA を抽出した。50%エタノール沈殿工程を設けることで不純物を大幅に除去した。DNA を酵素処理でヌクレオシドに分解し、逆相-イオン交換ミックスモードカラムを用いて精製した。濃縮後、LC-MS/MS で dDHT およびチミジンを測定した。固相精製によって微量の dDHT 測定の支障となるデオキシシチジン、デオキシグアノシンおよびデオキシアデノシンを選択的に除去することが可能となった。 本法を γ線照射したレバーに適用したところ、dDHT は、照射特異的に生成しており、その生成量は、殺菌を目的とした実用的線量を包括する 2~10 kGy の範囲で線量依存的であった。また、検出された dDHT の R-S 異性体比は、概ね 1:1 であり、既報に一致した。また、プロダクトイオンスキャン法および UVスペクトラム測定の結果においても dDHT が 照射特異的に生成していることを強く示唆していた。このことから dDHT は、γ線照射したレバーの新たな検知指標として期待できることが分かった。 また、同様の結果をエビについても得ることができた。エビは、脂質含有量が少ないことからアルキルシクロブタノンを指標とした検知法の適用が困難であるため、熱ルミネッセンス法しか適用できない。本法は、エビでも適用可能であることから、多様な食品に適用可能な照射食品の新規検知法として期待できると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実用的線量となる γ線を照射したレバーまたはエビに生成した dDHT を高感度に検出できる分析法を構築した。照射試料からは特異的かつ線量依存的に dDHT が検出された。従来、エビでの放射線照射履歴の検知には、熱ルミネッセンス法が使用されるが、試料から鉱物を分離する必要があり、鉱物が採取されなければ適用が困難となる。一方、開発した分析法は、フェノール・クロロホルム抽出法で得た DNA を酵素分解し、固相抽出による精製を経て LC-MS/MS で分析するものであり、試料上の制約は殆どないと考えられる。また、本法は、LC-MS/MS を所有していれば実地可能であることから多くの試験機関で運用可能と期待される。このように、目標とする多様な食品に適用可能な照射食品の新規検知法の開発に着実に近づいていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
香辛料をはじめとする植物性試料から dDHT の検出に必要な品質および量を備えた DNA 採取方法を確立する。キットを用いて採取可能な DNA では、品質および量において満足できないことから CTAB を用いた普遍的な方法に立ち返って検討する。一方、動物性試料については、分析法が確立したので、種々の動物性試料についてその適用性を検証する。また、γ線照射により生成した dDHT の保存および調理過程での消長について実用性の観点に立って引き続き解析する。
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Causes of Carryover |
以下の2点により、次年度使用額が生じた。 1:DNA 抽出工程をキットからフェノール・クロロホルム抽出に変更したことにより、物品費の使用額が想定を下回った。 2:今年度前半の進捗がやや芳しくなく、学会発表を見送ったために旅費の使用額が想定を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、以下のとおり有効活用を図る。 1:γ線照射によって、dDHT 以外に生成が認められる損傷ヌクレオシド類の分析に必要な LC-MS/MS 用カラムの購入費に充てる。 2:学会および学術誌での成果発表を積極的に行うための旅費および印刷費等に充てる。
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