2013 Fiscal Year Research-status Report
肺炎球菌ワクチン導入による菌株遷移と新たな高病原性菌発生リスクの解析
Project/Area Number |
25460835
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
河原 隆二 大阪府立公衆衛生研究所, その他部局等, 主任研究員 (10332454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武内 一 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (30552806)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肺炎球菌 / IPD / ワクチン / 保菌 / 病原因子 |
Research Abstract |
ワクチン普及期(PCV7、2011~2012年)に健康保育園児より分離・収集した414株の肺炎球菌について解析を実施した。すなわち、血清型別や薬剤感受性試験を行い、また薬剤耐性遺伝子の検出やMLSTなどの遺伝子解析も行った。 血清型別の結果からPCV7のカバー率は約20%となっており、過去の調査(40~60%)よりも低い結果となった。また、菌血症では分離されることが少ない血清型が多かったのが特徴的であり、6Cは30%、15Bは12%という検出率であった。これらは保育施設によって偏りが見られたことから、各施設ごとの「流行株」の存在が示唆された。薬剤耐性状況について、いわゆるPRSP、PISP(ペニシリン非感受性株)の割合は22%、19%で、感受性株は58%となった。これを血清型別に見ると、PCV7対応血清型では非感受性株が79%となっており、ワクチンに保菌を抑制する効果があれば、今後、PRSPの減少につながることが示唆された。リアルタイムPCRを用いて、マクロライド耐性遺伝子(ermB、mefE)、テトラサイクリン耐性遺伝子(tetM)の保有状況を調べた。ermB/mefEいずれか陽性は97%、tetM陽性は95%で、市中における耐性率は極めて高く、特に臨床的によく用いられるマクロライド系抗菌剤の効果はほぼ期待できないことが明らかとなった。 MLST、pbp遺伝子は既存の解析系および一部改良を加えたものとを用いて解析を進めており、病原因子の検出系については、いくつかの候補を用いてトライアルをすすめているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
血清型別、薬剤感受性試験、リアルタイムPCRを用いた耐性遺伝子検出についてはおおむね順調に実施できている。一方、MLST、pbp遺伝子解析において、遺伝子の増幅が見られないなどのトラブルが生じ、解析が思ったよりも進まなかった。新たにプライマーを設計するなどの対策を講じたところ、一応解決した。しかし、株によって使い分けが必要となっており、結果的に解析の効率は下がってしまった。菌株数が多数である上、再度保菌調査を予定しており、今後解析を進めていく上でのボトルネックとなることを懸念している。
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Strategy for Future Research Activity |
前回実施した調査と同様に、平成26年度を通して健康な保育園児の保菌状況について調査を実施する。研究分担者とともにその準備を進めており、特に問題なく実施予定である。この調査で得られた菌株について、逐次血清型別や薬剤感受性試験、MLST、薬剤耐性遺伝子等の解析を行い、データとして蓄積する。 また、菌株解析データに加え、保菌調査実施時に収集した疫学情報を活用し、ワクチン接種と分離株の関連性や、地理的条件や時間軸などを加味して疫学的解析を実施する。この際、前回の調査で得られた検体についても同様に解析を実施する。 病原因子の検出系について、最終的な選定を行いこれまでに得られた菌株について応用を行う。また、保菌菌株だけではなく、本研究所にて保有する血液培養由来株や髄膜炎由来株などでも同様の解析を実施し、保菌菌株との差異について比較検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究遂行にあたり、解析を行う上でのテクニカルなトラブルにより、一部予定通りに実施できなかったところがあった。その部分で予定していた物品費等について、実施を次年度としたため。 次年度分とあわせ、予定していた解析を実施するとともに、新たな保菌調査や菌株解析のために活用する予定である。
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Research Products
(1 results)