2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25460848
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
一ノ渡 学 岩手医科大学, 医学部, 講師 (00360701)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 院内感染管理 |
Research Abstract |
<医療従事者による手指保菌株の検討>【クロルヘキシジングルコン酸塩長期使用による医療従事者保菌株の薬剤感受性の動向】 国内における手術時手指消毒法においては、クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)を用いたラビング洗浄が主流化しているため、感染制御の観点から医療従事者保菌株の薬剤感受性におけるCHG長期使用の影響を検討した。検出保菌株はブドウ球菌属が最も多く、セフェム系抗菌薬に対するMIC値を年度ごとに比較検討すると、後発世代の抗菌薬に対するMIC値において経時的な増加傾向が示唆された。さらにVCMやTEICに対するMIC値において高値を示す株が見られたが、経時による顕著な増加傾向は見られなかった。しかしながら、本邦におけるCHGに対するアレルギーへの考慮を検討することや他研究機関の報告が消毒法の順守に限られたものであるため、本研究のように医療従事者の保菌株に注目した報告は希少であり、国内の感染制御を考える上でこの検討は重要であると示唆された。この内容は第29回日本環境感染学会総会にて報告した。 <ATP迅速測定法を用いた感染制御補助管理ツールの有用性に関する検討> スクラブ洗浄の指標としてATP迅速測定法の有用性について検討し、医療従事者の保菌状態を把握するツールを得ることを目的として検討した。その結果、擦式アルコール製剤を用いて消毒しても消毒しない場合と同等のATP量が検出され、ATPの源は被験者細胞由来であると示唆された。スクラブ洗浄を行ったサンプルにおいては、消毒成分による生菌数の減少効果よりも顕著なATP量の減少が見られ、医療従事者の手指細胞タンパク由来のATPを除去する効果を見ることで感染管理のツールとして利用できる可能性が示唆された。したがって、ATP迅速測定法は感染制御の補助管理ツールとして有効であると示唆された。この内容は第35回日本手術医学会総会にて報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
<医療従事者による手指保菌株の採取> 研究実施計画に基づいて医療従事者の手指保菌株の採取に成功し、その調査については、クロルヘキシジングルコン酸塩の使用に着目して検討を行ってきた。国内の他の研究施設の報告ではSSIの原因としての医療従事者の保菌株に注目した報告はなく、現時点においても消毒行為の遵守に関する報告に留まっているのが現状である。そのような状況において、国内における医療従事者の保菌株に注目した本研究の希少価値は高いと捉えている。したがって、次年度以降においても継続して検討する意義は高いと示唆される。 平成25年度の研究実施計画は以上であったが、手術室現場での対応の簡便さを検討する上で<ATP迅速測定法を用いた感染制御補助管理ツールの有用性に関する検討>を加えて行った。その結果、ATP量はその源から必ずしも生菌数の測定とは言えないが感染制御の管理ツールとしてはある程度有効であることが示唆された。 以上のことから、おおむね研究は順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
<手指消毒薬による医療従事者保菌株の薬剤感受性に対する影響> 現時点における手術時手指消毒薬はクロルヘキシジングルコン酸塩のみであるため、消毒薬自体の手指常在菌に対する影響を調査することは、薬剤耐性株保菌者を手術担当から除外する米国での感染管理が困難である日本国内において非常に重要であると考える。さらに今年度の概要で示した通り、国内においても医療従事者の保菌状態を把握することは難しいため、本研究の検討は希少かつ重要であると考える。そこで、ラビング消毒実施者を対象に前年度と同様に手指細菌を採取し、抗菌薬に対する薬剤感受性を検討して手指消毒薬に対する影響について検討する。 今年度は一般に使用する抗菌薬に加えて、広く消毒薬に使用され、かつ縫合糸に含有しているトリクロサン感受性に着目して検討する。 さらに、医療従事者の保菌株との比較対象として一般の市中保菌株も採取して検討を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度の研究推進については、交付いただいた研究費に基づいて行ってきた。本研究では、細菌を採取し、検出・培養・分離が必須であり、そのための生培地を購入細目にあてている。生培地には使用期限が限られているものが多く、次年度に繰り越した方が研究の遂行にとって有効であったため次年度使用額が発生した。 前年度と同様に医療従事者の細菌採取に関連した物品費を中心に使用する計画である。 したがって、生培地、粉末培地やシャーレ、その後に用いる菌種同定キットや試薬ならびに毒素測定のための試薬を購入して研究を推進する予定である。また、その成果を発表する費用についても計上する予定である。
|